「嗜好品」という言葉、そして「様々なほっとする飲み物」という概念100年前に生まれた。
高田氏は社会学の研究家、嗜好品とは、「コーヒー・酒・たばこ・茶・チョコレートはもちろん、コーラ(西アフリカ)やカート(イエメン)、さらには香水・ハチミツ・音楽・ケータイまで」
筆者によれば嗜好品という言葉は1912年森鴎外の小説に初めて登場
藥は勿論の事、人生に必要な嗜好品に毒になるような物は幾らもある。世間の恐怖はどうかするとその毒になることのある物を、根本から無くしてしまおうとして、必要な物までを遠ざけやうとする。要求が過大になる。出來ない相談になる。
— 森鴎外「藤棚」、『太陽』第18巻第9号、1912年。
嗜好品というとても英訳しにくい日本語 | 英語 with Luke
嗜好品に直接該当する英語は存在しない、日本語によって育まれた概念。
嗜好品とは
辞書的知識によると嗜好品とは「栄養摂取を目的とせず、香味や刺激を得る為の飲食物(広辞苑)だとされる。(中略)
- 「通常の飲食物」ではない。=栄養・エネルギー源としては期待しない。
- 「通常の薬」でもない。=病気への効果を期待しない。
- 生命維持に「積極的な効果」はない。
- しかし「ないと寂しい感じ」がする。
- 摂取すると精神(心)に良い効果」がもたらされる。
- しばしば人との出会いや意思疎通を円滑にする効果を発揮する。
- 「植物素材」が使われる場合が多い。
してみれば「嗜好品」は、「遊びと楽しみの要素をはらむ飲食物」だともいえよう。(3ページ)
呪薬・医薬が嗜好品を経て常用品になる
ある坊さんが牛飼いの男に茶を出した。茶を知らない牛飼いは、それは何かと聞く。すると坊さんが、牛飼いの男に茶を出した。茶を知らない牛飼いは、「それは何か」と聞く。すると坊さんが応える。茶というありがたいものだ。これを飲むと3つの公功徳がある。第一は「眠くならない」、第二は「煩悩が抑えらるので性欲が起きない」、第三は「食べ物の消化を促すので、すぐにこなれてしまう。」これに対して、牛飼いはこうつぶやいた。「なんだ、つまらない。茶はわしらの楽しみをみな奪い取ってしまうではないか。」
この場合の茶は「薬」から「嗜好品」に変化する過程に位置していたといえる。それが茶の湯の世界では、明らかに「嗜好品」になる。やがて近世になると。茶の葉を煮出して飲む習慣が一般にも広がり、「常用品」になっていった。(235ページ)
Kochoの考えた事
今から100年前に嗜好品という言葉が生まれた。西洋化に伴い紅茶、コーヒー、様々ないものが一度に入ってきた、そして嗜好品という概念が生まれた。嗜好品の「遊びと楽しみの要素をはらむもの」という横断的な解釈はより鮮明に本質を理解できる。
人は習慣を求め、習慣の中に変化を求め、習慣が人との共通項になる。嗜好品という概念を理解する事によって自分がなぜコーヒーを飲むのか、客観的に理解できる。
蛇足
軍医であり小説家、森鴎外も「ほっと」する時間が欲しかった。