毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

成功する為に必要な事、「見えない鎖」を意識する事~資本主義を生き抜く為に18世紀の思想を使う

今こそルソーを読み直す (生活人新書)

 

仲正氏は社会思想史、比較文学の研究家。仲正氏は18世紀フランスの啓蒙思想家ルソーの、「一般意志というコンセプトを使って、理想の社会のあり方に対するアプローチ」を現代からの視点で分析する。

 

 f:id:kocho-3:20140514074252p:plain1712-1778ジャン=ジャック・ルソー - Wikipedia

 

自由なものとして生まれ、鎖に繋がれている

 

人間は自由なものとして生まれ、至る処で鎖に繋がれている。自分が他人の主人であると思っているような者も、実はその人々以上に奴隷なのだ、どうしてこの変化が生じたのか?(ルソー、社会契約論)

 

(この鎖が)社会を形成しているさまざまな「外観」、慣習、風俗、法律などのことを指しているのは明らかだろう。外的な決まりごとに囚われて、“自由に振る舞えないという意味では、大勢の奴隷を所有している主もまた、奴隷である。(中略)ルソーにとって、この鎖は単なる物理的な力ではなく、支配者自身をも呪縛している「社会的規範」である。(94ページ)

 

ルソーの「外観」とは

 

ルソーの思想のユニークさは、内面とは異なる「外観」にすぎないものが、我々の習俗の中にしっかりと定着し、人々の振る舞いを-少なくとも表面的には-画一化させ、「社会」を構成している、という発想にある。(38ページ)

 

民主主義も一つの鎖?

 

私たちは常に、自分の周りの人たちの意見と自分自身の意見のずれを意識し、あまり浮かないように周りに合わせようととしている。そうした調整を繰り返しているうちに、私たちが何が“本当の意見”なのかわからなくなっている。民主主義を前提とする政治制度は、“私”自身がはっきりと気づかない内に、“私の意見”をコントロールし、“みんな”の順応するよう誘導しているのかもしれない。(12ページ)

 

ルソーの一般意志

 

ルソーの一般意志論は(民主主義が“本当の意見”の乖離をもたらす危険性)の問題の解決に向けての理想的条件を示す優れた理論と見なされ、フランス革命以降の西欧諸国の政治思想に強い影響を与えることになった。国民全体の「一般意志」=“みんなの意志”が存在し、それに基づいて政治が行われるとすれば、そこに「多数波VS少数波」の対立はなはずであり、問題は解決される、という希望的な見方が醸成された訳である。(12ページ)

 

一般意志は個別意志の総和ではない

 

各人の利害は異なった原理に従って構成されているので、二人の人の利害を単純に突き合わせるだけだと、「とにかく違う!」ということになるかもしれない。しかし、そこに第三者が登場してきて、比較のための参照項となると、最初に二人の間の「共通の利害」が見えてくる。(中略)お互いの利害を多角的・総合的に比較検討することを通して、全員にとっての共通の利益を明らかにしていくプロセスを指していると思われる。(136ページ)

 

 

 

Kochoの考えた事~株式会社で例えてみる

 

ある会社の筆頭株主Aさんは利益で配当を増やすべきである、第二の株主のBさんは利益で融資を返済し内部留保に務めるべきである、そこに登場した第三の株主のCさん、利益を設備投資に回せば利益が拡大する、という意見を持つ。お互いの利害を比較検討した結果、全員の共通の利益は株式価値を高める事にある、従ってある会社の環境から、設備投資に回せば利益が拡大する事が一番良い、という結論になった。

 

このストーリーで重要な事は筆頭株主が数が多いから正しい、他の株主の意見を無視していい、とはならないという事が重要である。一般意志の形成が可能である、という意志が理想的なゴールを可能とする。

 

 

 

我々は資本主義=民主主義、数こそ正義という『社会を形成しているさまざまな「外観」、慣習、風俗、法律』に繋がれていないであろうか?

 

 

 

蛇足

 

一般意志の形成が可能である、と考えるリーダーが一般意志を実現させる