毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

どうして雪の結晶は綺麗か?~私たちも雪の結晶の様に綺麗になる。

 流れとかたち――万物のデザインを決める新たな物理法則

べジャン氏は物理学(熱力学)の研究家。「すべては、より良く流れるかたちに進化する」という、一見過激なこの物理法則=コンストラクタル理論」を展開する。 

コンストラクタル理論とは

生物・無生物の別なく、動くものはすべて流動系である。流動系はみな、抵抗(例えば摩擦)に満ちた地表を通過する動きを促進する為に、時と共に形と構造を生み出す。(11ページ)

熱力学第二法則との関係

熱力学第二法則の表現 の一つが「「断熱系において不可逆変化が生じた場合、その系のエントロピーは増大する。」である。本書の解説者である物理学者(熱力学)木村氏の解説から引用する。

熱力学第二法則はその具体的なプロセスについては何一つ答えない。ベンジャミンはこの構造は第二法則により方向づけられた状態を出現させるため、流動抵抗を低減させるように発生し、そして進化し続けるのである。すなわち、この途中の非平衡均衡過程について決定論的な予測を下す事が可能となる。(中略)系の中に予め構造を配置することから来ている。流れを最適化するという方向性を堅持するだけで、系内部の流動構造の進化を、視覚的に提示することができる。重要な点は、その作業プロセスがどこまでも決定論的であることだ。(400-401ページから再構成)

雪の結晶

雪の結晶の形状は、凍結するときに表面に生じる熱(凝固潜熱)を発散する流動デザインなのだ。水蒸気が凝固して凍るとき、余剰の熱が放出される。結晶が十分に大きくなると、針が現れ、球形よりも成長が速く、急速に進む。結晶化をさらに促進するために、大きな雪はさらに促進するためいに、大きな雪はさらに多くの針を持つ形に変わり、熱を発散する。複雑性は有限(ほどほど)で、コンストラクタル法則に基づいて現れるデザインの一部だ。(22ページから再構成)

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息を飲むほど美しい雪の結晶(画像)

 

我々は地理的にも時間的にも動く存在である

我々の複雑な活動も分類してみると雪の結晶に例えられる。与えられた環境の中で、既にある流れを見極め、その中で自然と綺麗に成長していく、これがイメージできる。雪の結晶の形状は「結果であって、目的ではないし、芸術家の夢がかなった訳でもない」(23ページ)、我々は望むからこそ結果をだすのであり、誰かに指示されている訳でもないし、結晶の形状に優劣はない。

蛇足

すべての結晶は美しさを持つ。