毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

現代科学と仏教の共通点

科学するブッダ 犀の角たち (角川ソフィア文庫)

佐々木氏は仏教学の研究家。科学と仏教。このまったく無関係に見える二つの人間活動には、驚くべき共通性がある。(裏表紙より)

神の視点

「神の視点」という言葉は、本当に神がいるとかいないとかそういう次元のものではない。我々の脳が「世界はこうあるべし。こうあった時、それは最も美しく心地よい」と感じるような視点、それを神の視点と読んでいる。(

人間化

科学の人間化という動きは、既存の論理体系の中に含まれている神の視点、すなわち我々の脳が生み出す理想的な視点を排除して、。現実観察がもたらす人間存在本来の視点に入れ替えることで進展する。(66ページ)

科学

科学はキリスト教社会の中で神とともに生まれ、育ってきたが、次第にその影響力を脱して人間化してきた。神の視点を放棄しつつ、人間独自の視点に基づく法則世界を構築しつつあるということである。したがって、それは仏教的な世界観の方へと次第に近づいてきているいることになる。

仏教

仏教は、同じく神なき世界で人間という存在だけを拠り所として、納得できる精神的世界観を確立する為に生まれてきた宗教である。(205ページ)

仏教と科学は同次元の世界観に立つ人間活動であり、両者を同時に受け入れてもなんら矛盾することがない、ということになる。(中略)特に最近の脳科学の発展は物質社会と精神世界の壁 を次第に破壊しつつあるから、いよいよ科学と仏教のボーダーがぼやけてきている。(261ページ)

仏教と科学の将来

仏教が(科学ではなく)宗教として存在しているゆえんは悟りのプロセスにおける精神のレベルアップに関して理論的説明がなく、それを最初から信じてかからなければならないという一点にあった。ブッダの言葉を信じてついていく者にだけ、真の平安があるというわけだ。もし脳科学がこの機構を解明したらどうなるのか?(中略)仏教は完全に科学的な自己改良システムに変貌する。

科学の歴史をたどる

作者は物理学、進化論、数学の発展の歴史、そしてペンローズ説を人間化の歴史として分析する。この歴史をリアルに感じられた時科学の意味が再認識できる。私にとっては木村資生氏の遺伝子中立論に関する言及が最も理解の助けになった。佐々木氏は木村氏の中立論を「自然淘汰というのは、良いものだけを選び出す作用なのではなく、悪いものだけをつみ取る作用だということになる。」と分析する。