毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

自己と環境性が出発点~自分を理解する為に

最近様々な処で現象学という言葉を目にし、気になっていた。

 これが現象学だ (講談社現代新書)

谷氏は哲学、倫理学の研究者。「あなたと私が現象学だ」という序説で、フッサール(1859-1938)の現象学について解説している。

現象学

現象学の基本姿勢は「事象そのものへ」という標語に表現される様に、最も具体的な現実の経験(直接経験)に密着し、抽象的な思考から最も遠い処から始める。

現出の直接経験から「還元あるいは志向的体験」を通じて「現出者」を知覚・経験する。(61ページより構成)

事例

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事例A

①網膜に写る平行四辺形(現出)を感覚・体験する。

↓還元あるいは志向的体験↓

②正方形そのものを知覚・経験する。

 

事例B

①網膜に写る自転車を漕ぐ下半身を感覚・体験する。

②自転車に乗っている私全体を知覚・経験する。

 

①’自転車に乗っている私全体を感覚・体験する。

②’背景的地平の中で自転車に乗って移動する私を知覚・経験する。

 

①’’背景的地平の中で自転車に乗って移動する私を感覚・体験する。

②’’拡大した背景の中で存在する私を知覚・経験する。 

現象学登場の背景:科学・数学・論理学の地盤喪失

19世紀後半,数学や論理学は経験から独立した公理体系として展開しようとしていた。数学や論理学は経験から独立してアプリオリ(自明の理)として可能性の領分を示すことが可能となった。更に数学に依拠して成立した近代自然科学も同様に天空(抽象的な思考)に舞い上がった。現象学は地に足を付けた哲学として展開した。

蛇足

自分を理解する為に、自己と環境の関係性が出発点