毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

マグネシウム文明論

 マグネシウム文明論 (PHP新書)  

矢部氏はレーザー核融合の研究者、マグネシウムの産業化のため大学発ベンチャーを設立。氏の「石油に代わる新エネルギー資源」のロジックは以下の通り。

マグネシウムをエネルギー技術に活用

マグネシウムは25メガジュール(mj)/kg、石炭の30mj/kgと石油の44mj/kgの間で価格は250円/kg、原油の60円/ℓ(≒kg)と比較し高い為安くできれば燃料として使える。

マグネシウムは海水に無尽蔵に含有され、現在は逆浸透膜によって濾過しているが効率が良くなく、改良法を開発中。

③海水から取り出したマグネシウムは太陽光+クロム・ネオジウムYAGレーザーで精錬可能、効率的なリサイクル可能な燃料として活用可能である。

矢部氏はレーザー核融合の専門家

私は、レーザー核融合の研究を30年間続けてきました。私が研究生活に入った頃、世界中の研究者は核融合の実現に楽観的な見通しを持っていました。「ネイチャー」に発表されたナッコルス博士の論文(1972年)にしても出力1キロジュールのレーザー発生装置ができたら核融合は実現できる」としていたぐらいです。しかし現在最先端の融合研究で使われているのは、1メガジュール、つまり1キロジュールの1000倍の出力のレーザーです。それでも、核融合実現の見通しはたっていません。レーザー核融合では燃料となる三重水素(を含む固体)にレーザーを照射し、急激に表面を加熱します。すると、プラズマが膨張する反作用で爆縮され、高温高圧状態がつくられます。しかし、この爆縮が不安定でどういう条件で起こるかがよくわかっていないのです。

CIP法 Constrained Interpolation Profile Scheme

矢部氏によって提案された、高次精度差分法の一つである。CIP法は機械工学、流体、電磁気、弾性体力学などの分野で広く数値解析に使用されている。(Wiki)

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直感的な理解としては左の数値をグラフ化する場合に黒線でなく、ピンク線になる様に「物理的に妥当と思われるデータを参考に」補正する数値解析の技術。

核融合からマグネシウム文明論へ

氏はレーザー核融合の研究によりCIP数値解析の確立によりシュミレーションの分野で成果を挙げた。同時に氏は「クロム・ネオジウムYAGレーザー媒質」による高効率レーザー源を知っていた。これを産業化できないかという事からマグネシウム精錬というアプリケーションを構想した。逆浸透膜と併用する海水からマグネシウムを抽出する方法は開発中。この技術が確立すると産業化が可能となろう。

蛇足

CIP法とマグネシウムは直接関係ありませんが、氏の発想(行動力)の原点はここにあると考える。