毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

人類が最初に文字で記録をしたものは何?

今は存在しないシュメル語、20世紀に現在のイラクのウルク、ユーフラテス川沿いの古都、で発掘された事により解読された。

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 イラスト:出展メソポタミヤ文明70ページ 中田一郎著

 

シュメル―人類最古の文明 (中公新書)

小林氏はオリエント文明の研究者 。

最古の文字はシュメルで生まれた、よく知られている楔形文字ではなく、絵文字であって、生まれた場所はウルク市であった。ウルクは現代名をワルカといい、「旧約聖書」にもエレクという名で登場する。5000年以上前の都市名の音が伝えられている珍しい例である。(32ページ)

前3200年頃にウルク第四層および前3100ー2900年頃の第三層から約800枚の粘土版を発見した。これが世界最古の文書で、ウルクからはその後も古抽文書(古抽文字がかかれた粘土版など)が出土し、断面を含めて約3000枚になる。(39ページ)

シュメル語の歴史

小林氏の著作を下に時系列に整理してみる。 

BC4,400:メソポタミアの都市でトークンとブッラが使われる。

トークンとは陶器の小片(2㎝程度)、これが例えば「羊」を具象し、ブッラ(直10㎝の 粘土の球)にこのトークンを押しつけて「羊とその数」を記録していた。

BC3,200:ウルク市でウルク古抽文字(最古の絵文字)が短期間に成立。

トークンが粘土に押しつけられたマークを絵文字として取り扱う事で最古の絵文字が成立する。 

BC2,500:絵文字から600字の楔形文字が体系化・整備

絵文字が抽象化して楔文字となり600字の文字体系が整備される。この中には表音文字も含まれていた。

BC2,000:表音文字として他言語にも使われる。

アッカド語でシュメル文字が主に表音文字として使われる。口語はアッカド語で、文書はシュメル語で、という分離がおきる。

BC1000:民族の競争の中で、アラム語がフェニキア文字(現在のアルファベットの祖先で単音を表示)を使用する事からアッカド語より簡素で主流となっていく。

BC600:シュメル語は新バビロニア時代までは宗教語、学者語として長く受け継がれ、欧州におけるラテン語に類似した地位を与えられていた。 

最初の記録は会計帳簿

人間が最初に記録をしたのは家畜、穀物の量や貸借など経済活動に伴うもの。都市文明の成立を背景として考えると借入証書というより会計帳簿と捕らえた方がいい。更にいえば税金の歳入記録であろう。

 その後表音文字が加わり、歴史、文学と精神性のあるものに拡大していった。古代オリエント文明は粘土版に乾燥した気候、5,000年前の記録が残っている。シュメル人とシュメル語は既に滅亡、彼らが残そうとした記録は今に伝わる。5,000年という時間軸を噛みしめたい。