毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

フラッシュ・クラッシュ~Artificial Intelligenceの視点から

フラッシュ・クラッシュとは金融市場において数分という極めて短い時間に価格が暴落する事。2010年5月ニューヨーク証券取引所で株式のプログラム売買による売りが売りを呼ぶ大量取引により9%ダウ平均株価が暴落した。また最近では2013年4月に「偽」AP通信のTwitterのデマ情報(ホワイトハウスで爆破、大統領が負傷)により数分で株価が150ドル下がった事がある。

  クラウドからAIへ アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場 (朝日新書)

小林氏はITなどに関するアナリスト。AIにまつわる諸問題として小林氏はこのフラッシュ・クラッシュを説明する。

・相場関係者の間では「ボット(ロボットの略)」と呼ばれ、いずれも機械学習能力を備えたニューラル・ネットワーク技術を搭載しています。

・金融情報のダウジョーンズは「レキシンコン」と呼ばれるボット専用のニュース配信  システムを提供するようになりました。AIロボット達は常時「レキシンコン」から最新の金融情報を入手し、それを機械学習で消化することで瞬時に投資戦略を練り上げます。

・「ボットが(取引に際して)どのように考え、どのように売買の決断に至ったのか、それを後から追跡するのは不可能だ」と口を揃えます。これはまさにニューラル・ネットワークが持つブラック・ボックス的な性格によるのです。

・自動取引システム(ボット)が暴走したことの方が本質的な問題と見ています。

(192~196ページ)

  私は自動プログラム売買が証券価格の歪みの裁定取引、あるいはミリセカンド単位の時間の裁定取引、言い換えれば合理的期待仮説に基づくものと勝手に理解していた。しかしもっと広範囲・高度であり「レキシンコン」により証券価格情報以外のテキスト情報も含めニューラルコンピューティングによりプログラム取引、もう少し特定すれば「ブラック・スワン理論」(市場に多大な影響を与える情報を下にした裁定取引)によるプログラム取引が行われるまでに投資の意思決定がAIに委ねられているのが状況である。

これはAIの問題というより機関投資家の投資行動が問題であり、些細な問題~フラッシュ・クラッシュが起きても今の所大多数の人には影響がほとんどない~だと思う。なぜなら利益を得るのも損失を被るのもAIによるプログラム取引であり「機関投資家」の損益の総和はゼロだからである。金融市場がバーチャル空間と再認識した。

蛇足

レキシコン(LEXICON)の意味を調べると「ギリシャ語・ヘブライ語・ラテン語など古語による辞書・辞典」との事。辞書・辞典は単なるデータブックではないはず。