毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

1904年9月5日 日露戦争終結

 日本型リーダーはなぜ失敗するのか (文春新書)

半藤氏は文藝春秋の役員を務め、歴史作家になった人物。

太平洋戦争から導きだせるもの、という章で以下の様に記しています。

どうも国家を敗亡に導いたのは、これぞというリーダーがいなかった、(中略)そもそもが日露戦争の大勝利の栄光にあったとわかります。日露戦争という日本近代史に燦然と輝く栄光を背負って、というより、その栄光を汚さないために、参謀まかせの「太っ腹リーダー像」が生み出された。(253ページ)

 半藤氏は本書で日本軍が史実を忠実に記録をした機密文書「極秘明治三十七年海戦史」と国民向けに戦意高揚を目的に演出されて出版された「明治三十七年海戦史」の2種類があった事を明らかにします。(50ページ)演出版では日本軍の優秀さを強調するが故に東郷元帥と大山元帥を神格化してしまった。日本軍のリーダーの理想は神格化された存在であり、参謀にすべてを任せる事で勝利したというストーリーを作った。極秘版が戦後40年を経て公開されたとすれば日露戦争をテーマにした数々の小説は演出版が底本となっていると考えてよさそうである。我々が今読む小説もその枠組みの中にあるという事である。

 

 いつの時代も人が欲する情報は簡単に自己増殖する、一方欲しない情報は盲点になってしまい認識されない。情報インフラの整備により様々な情報にアクセスできる今でも都市伝説が消えないのも同じ事であろう。

 

今からわずか109年前の9月の出来事である。