毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

宗教改革後、どうしてキリスト教は影響力を拡大したのか?~『日本人のための宗教原論―あなたを宗教はどう助けてくれるのか』小室 直樹(2000)

日本人のための宗教原論―あなたを宗教はどう助けてくれるのか

宗教改革以降、キリスト教が影響力を拡大していた?(2000)

 

中世カトリック社会

キリスト教は、伝播してからずっと、都市のインテリには信奉されたものの、大衆や田舎の農民は別の宗教、すなわち、昔の神々や悪魔や魔女などの信仰に心を捉えられていた。キリスト教は上辺だけであって、本心では土着の神々を信じていた。(162ページ)

宗教改革とはキリスト教化の最終局面

宗教改革とは、実は、本格的キリスト教の創造であった。本格的キリスト教の布教開始であった。それまでは、キリスト教もどきが、ヨーロッパの表面をかすっていただけといえる。ヴェバーは・・・宗教改革によって、世の中は徹底的にキリスト教的になったことに注目して、読者の注意を喚起している。キリスト教の徹底こそが資本主義の精神を準備した。(164ページ)

キリスト教と資本主義

宗教改革で、キリスト教は人々の心に深く染みわたった。現世の職業が救済のための儀式と同じであると感じ取れるようになったのである。・・・経済活動は、利己的動機ではなく、神と隣人とを愛するための方法であると信じられるようになった。・・・(今までは悪とみなされていた)経済活動は、善と信じられることになった。(196ページ)

 資本主義のもうひとつ、目的合理的思考法

資本主義の精神には二つの側面があって、労働それ自体が救済のための宗教的儀式、すなわち、労働それ自体が目的であるという考え方と、目的合理的な考え方がある。(188ページ)

・・・ヴェバーは、(カトリックの)呪術からの解放こそが資本主義の精神が発生するための条件であるとしている。・・・教会の内にも外にも、正真正銘の呪術や魔術が跳梁しており、それらがいまだに人々の信仰の中心となっている。このことが資本主義、デモクラシー、近代法を著しく不完全なものとし(ていたのである。)162ページ)

 

日本人のための宗教原論

宗教革命以前、ヨーロッパではキリスト教はかすっていた、だけだった。宗教改革を経てキリスト教が徹底され資本主義の基盤となっていった。

整理してみるとキリスト教は①勤勉、②合理的思想法、の二つを社会に広く注入した。考えてみると科学的アプローチとはこの二つを基盤としていることに気付く。

それでは現代の我々は勤勉と合理的思想法に寄って立っているか?本質的貧困の解消し、キリスト教のみならず様々な宗教的基盤を失った我々は経済的利得だけでは動機づけられないでいる。更には超能力、占い、陰謀説、極端な愛国主義、など合理的思想から外れた行動も少なくない。

心からやりたい問題を見つけること、そして合理的にアプローチすること、キリスト教がそのことを教えてくれる。

蛇足

 呪術や魔術に惑わされている暇はない

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