毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

産業のモジュールはいつ始まったのか?~『 モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質』青木昌彦氏×安藤晴彦氏(2002)

 モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質 (経済産業研究所・経済政策レビュー)

 モジュール化とは、単なる分業ではない。全体として統一的に機能する包括的デザイン・ルールのもとで、より小さなサブシステムに作業を分業化・カプセル化・専門化することによって、複雑な製品や業務プロセスの構築を可能にする組織方法である。(2002)

 

 

1964年IBMが初めてのモジュール型コンピュータを開発

IBMや他のメインフレーム・メーカーのそれまでのモデルは、それぞれ独自で、共通性もなく、各モデルは固有のOS、プロセッサ、周辺機器やアプリケーションソフトを持っていた。・・・・エンドユーザーが、新しい装置に切り替えるときには、貴重なデータを失うリスクにさらされたのであった。・・・システム/360の開発担当者たちは、こうした問題に正面から挑戦した。コンピュータで「ファミリー」の概念を考え出し、様々な用途にそれぞれ適したサイズを持つが、実行命令セットはすべて同一のものを用い、周辺機器も共有できるようにした。(38ページ)

IBMメインフレーム市場を独占するが、、、

しかし、「モジュール化」は長期的にはIBM帝国を侵食することになった。・・・IBMのデザインルールに従いながらも、特定領域に専門特化することで、新興企業でも、IBMの内製製品に比べ、より良いものを作ることができた。最終的には、これらのモジュールの周辺で成長したダイナミックで革新的な産業が、まったく新しい種類のコンピュータ・システムを生み出し、メインフレームの市場シェアのほとんどを奪いとってしまったのである。(39ページ)

モジュール化のリスク

IBMは、自社のシステムのモジュール化を反映して、社内での設計努力を増やしてこなかった。このため、利益の見込めるモジュール設計の機械を卓上に置きっ放しにしていたのである。(88ページ)

IBMの大型機におけるモジュール化は、基本的に企業内で行われたもので、大型機の部品は半導体メモリや磁気ディスクに至るまで内製化され、全盛期のIBMは世界最大の半導体メーカーであった。しかし、モジュールの境界は、企業の境界と一致する必要はない。この点で、モジュール化されたアーキテクチャ垂直統合型の企業組織の間には潜在的な矛盾があった。(116ページ)

安定した連結ルールの下では、各モジュールの設計に必要な情報処理は他から隠されうる。(25ページ)

 

モジュール化

モジュール化の流れは1964年IBMメインフレームから始まった。この流れはIBMから多くのスピンオフを生み、ベンチャーの新規参入を誘い、最終的にはコンピュータ業界全体をモジュール化させることになる。

モジュール化のメリットは①分業により巨大かつ複雑なシステムを実現できる、②各モジュールは平行作業が可能となりスピードが上がる、③モジュール構造は変化への対応力を保持する、と言われる。

一方モジュール化は組織も同様に分権化していく傾向を持ち、適切な権限移譲が行われなければスピンオフしていく。更に言えばモジュール化された情報は例えアーキテクチャ全体をデザインした者(たとえばIBM)と言えども、ブラックボックス化される。モジュール化された市場では、メリットもあるがリスクもある。

モジュール化の流れはコンピュータ業界から始まり、様々な産業にも広がり同じトレンドをモジュール化が始まって50年、まだその終着点は見えてこない。

蛇足

モジュール化を今風に言えばオープンアーキテクチャ

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