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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

お金だけでは未来は作れない~『 ブーメラン 欧州から恐慌が返ってくる』M・ルイス氏(2012)

 ブーメラン 欧州から恐慌が返ってくる (文春文庫)

サブプライム危機で大儲けした男たちが次に狙うのは「国家の破綻」。アイスランドアイルランドギリシャ、ドイツ、そして日本。(単行は2012、文庫は2014)

 

元々アイスランドは豊かだった

(漁業によって経済発展するために)めざすべきは、漁業にもっと多くの網や、もっと大きな船を買わせることではない。最小の努力で最大の漁獲高を得させることだ。・・・アイスランド政府は思い切った行動に出た。魚を私有化したのだ。漁業ひとりひとりに、過去の実績を参考にした水揚げ高が割り当てられた。・・・さらに都合のいいことに、漁をしたくなければ、自分の権利を、漁をしたい人間に売ることができた。水揚げ高は、最も地位の高い大手の漁師たち、つまり最大の効率で水揚げできる漁師たちの手もとに流れ込んだ。・・・新たな富みがアイスランドを変貌させ、千百年のあいだ隔絶されていた孤島が、(世界的なポップアーティストである)ビョークを生み出す国へと変わったのだ。(64ページ)

・・・アイスランドの若者たちは、留学費用が支給され、自分が興味を持つあらゆる分野で、教養を身につけることが奨励された。漁業政策による構造改革のおかげで、アイスランドは事実上、鱈(タラ)を博士号に変換させる機関になった。・・・距離を置いてアイスランド経済を眺めてみると、とても不自由な現象に気付かずにはいられない。国民が身につけた教養のレベルが高すぎて、実際に就く職業の適正と噛み合わないのだ。高度な教育を受け、知的に洗練されていて、各々が自分特別な存在だと思っている人々に、生業としてあてがわれるのが、労働条件の悪さが目立つふたつの職業、つまり、トロール漁と(易い電力を活かした)アルミニウム精錬なのだから、、、。・・・21世紀の夜明けになっても、アイスランド人たちは相変わらず、もっと自分たちの繊細な知性に見合う仕事がアイスランド経済の内部に現れる日を、そしてその職に就ける日を、待ち続けていた。そこへ、投資銀行業が登場する。(67ページ)

2003年、アメリカ型の金融を始める

アイスランド人たちは、金融とは生産的な企業活動より仲間同士の紙切れのやり取りを重視するものであることをただちに理解した。そして、金を貸すときには、ただ企業活動の援助をするだけでなく、友人や家族に資金を提供して、ほんものの投資銀行並にさまざまな資産を購入し、所有できるようにした。・・・それがアメリカ型の金融からアイスランド人が学んだ最大の知恵だった。重要なことは、右肩上がりに価値を高めていく資産を、借りた金で可能なかぎり多く買い集めること。2007年には、アイスランド人が所有する外国資産は2002年のおよそ50倍になっていた。(45ページ)

アイスランドのその後

アイスランドは2008年の金融危機以前、反映を謳歌していた、一人当たりGDPでは世界第5位、に国際競争力はヨーロッパ1位であり、人口30万人ながら強い経済力を持っていた。2006年当時産業としては金融部門の伸びが著しく、金融不動産GDPに占める割合は、26%に達していた。

アイスランドの金融は急拡大した。世界的な資産価値の上昇を背景に、借りた金で世界中の資産を買い漁った。資産価格の上昇が続いている間は儲かっているように見えていた。金融危機により今度はそれが逆回転した。

2009年アイスランドのすべての銀行は国営化、不良債権は国家に付け替えられた。その結果アイスランドの通貨は100%減価、国家破綻寸前に至る。その後通貨安に助けられ輸出と観光により持ち直し現在に至っている。

漁師たちは投資銀行家になった~ブーメラン

どうしてアイスランドが金融に傾倒していったか?高度な教育を受けた若者の知的好奇心を満足させるだけの産業がアイスランドには無かった。金融は知的好奇心を満足させられる産業に思えた、ということである。

この状況は日本を含む先進国共通の課題であろう。基本的に衣食住の問題が解決し従来型の産業の成長が鈍化する中、知的産業へのシフトが求められている。しかし新産業育成には時間がかかる。アイスランドと同じである。

我々の課題は次世代の為に新しい産業を用意することである。

蛇足

未来はお金だけでは作りだせない

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