毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

人類はいつからコンクリートを使っているか?~『 コンクリートなんでも小事典』土木学会関西支部

 コンクリートなんでも小事典―固まるしくみから、強さの秘密まで (ブルーバックス)

 コンクリートは 維持管理をきちんとすれば、構造物を100年もたせることも可能。(2008)

コンクリートはなぜ固まるか

セメントの原料には、主に石灰石と粘土、そして少量のけい石と鉄さいが用いられます。セメントを製造するには、まず、石灰石と粘土を細かく粉砕したものをキルンと呼ばれる大きな窯の中で1450℃にも達する高温で焼きます。この作業を焼成といいます。・・・こうしてできがあったセメントは、水と接触することで非常に激しく化学反応を起こす性質を持っています。・・・反応の結果、新たに生成される物質をセメント水和物といいます。・・・セメント水和物は、コンクリートの中にある砂や砂利を糊のように結び付け、強固なひとつの塊にする性質を持っています。このような過程を経て、コンクリートが強固に固まるのです。(21ページ)

古代ローマのコンクリートはヴェスヴィオ山の火山灰

ナポリから電車で30分もどのところに、ヴェスヴィオと呼ばれる大きな火山があります。・・・ヴェスヴィオは噴火の際に、大量の軽石や火山灰を噴き上げるタイプの火山で、その周辺地域には、水はけのよい火山灰などが深く堆積しています。古代ローマのコンクリートにとって、重要なカギとなったのが、この火山灰(ポッツォラーナ)でした。・・・ローマ人は水1、石灰2、ポッツォラーナ4の割合で混ぜ合わせ、現代の私たちが用いるモルタルと同じような方法で使用していたのです。いつのころからか、ローマ人は、このようにして作られたモルタルの中に、砕石や砂利を混入して一体化させ、建物の構造材として使用するようになりました。これが今日のコンクリートの原形となったということです。コンクリートの製造技術を得たローマ人は、その後、次々と巨大建造物を構築していきます。(36ページ)

近代コンクリートはイギリスで誕生

ヨーロッパは18世紀の産業革命を迎えるわけですが、その歴史の流れの中で、イギリス人のジョン・スミートンという若者が、イングランド南部のエディストーン灯台の建設にあたり、古代ローマに使用されていたコンクリートの製造技術に目を付けました。(43ページ)

f:id:kocho-3:20170209074717p:plainコロッセオ - Wikipedia

コンクリートなんでも小事典

本書によればコンクリートは9000年前のイスラエル、5000年前の中国、2000年前の古代ローマでは既に使われていたという。現在のコンクリートの直接の祖先は、古代ローマ人の製造技術を2000年経って復活させた産業革命期のイギリスである。古代ローマのコンクリート技術は中世の時代に忘れ去られていたのである。

私は今まで古代ローマの建造物は石積みによって作られていたと考えていた。考えてみればあの巨大建造物が石積みで作ったのでは強度からして不可能であろう。コンクリートの製造技術を忘れたから巨大建造物を作らなかったのか、巨大建造物を作る必要が無かったからコンクリートの製造技術を忘れたのか、今となっては不明である。

コンクリートが教えてくれること、歴史は一直線に進んでいない。歴史も、そして技術も、行きつ、戻りつ、している。

蛇足

ロマンティックの源意は古代ローマ

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