毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

実はマイナーな話題がウケる~『 雑談力 』百田尚樹氏(2016)

 雑談力 (PHP新書)

 百田氏は小説家、本当に面白い話題とは、「話し手が一番興味がある話題」である。そしてその話の構成を工夫しさえすれば、誰もが引き付けられる話になるのだ。(2016)

自分が関心を持つ話題

雑談について、多くの人が大きな勘違いをしているのは、「相手が興味をもちそうな話をすればいい」と思っていることです。実はこれは全然違います。本当に面白い話は、「話し手が一番興味のある話題」なのです。・・・マニアックな話であってもかまいません。むしろマニアックな話題というのは多くの人が普段あまり聞くことのない話だけに、逆に興味を持って聞いてもらえる可能性が高いのです。

ただ、ここですごく大切なことは、その個人的な興味の話を、「いかに面白く話せるか」です。・・・別の言い方をすれば、「自分の話したいことを、聞く方の身になって話す」ということです。(97ページ)

相手が最初興味の持っていない話題を面白くするには?

そのために、読者はそのことを何も知らないという前提で書きます。知っている前提で書くのでは、最初からマニア向けの本になります。

 たとえば私が零戦の話をする時は、まず零戦が不可能を可能にした戦闘機という話をします。当時の戦闘機で大切なものは、「格闘性能」と「速度」です。・・・旧日本海軍は航空会社に、他の戦闘機を凌駕する格闘性能と他の戦闘機よりも速い速度を要求しました、・・・これは当時の常識を超えた奇跡の戦闘機だったのです。(101ページ)

百田氏の小説のテーマ

私は『永遠の0』という、大東亜戦争零戦をテーマに書いた本でデビューしました。・・・私の次の長編作品は、『ボックス』です。これはアマチュアボクシングがテーマです。実は私は大学時代、ボクシング部に所属していました。・・・次に書いたのは『風の中のマリア』です。これはなんとオオスズメバチがテーマです。登場人物に人間はまったく出てきません。・・・その後の私の小説のテーマを書けば、「自費出版」「整形手術」「戦後の石油業マイ」「多重人格」などです。「整形手術」を除いて、あまり多くの人が関心を持ちそうなテーマではありません。けど、すべてそこそこに売れました。(100ページ)

雑談力

百田氏は30年以上も放送作家として活躍、その後小説家に転身した。テレビでは視聴者は面白くなければいつでもチャンネルを変えることができる。番組を作る場合、冒頭のつかみから始まって常に視聴者を飽きさせない工夫が必要となる。

百田氏は小説では自分自身で興味があり、マイナーなテーマを選んでいる。よく考えてみれば読者が既に知っている話より、知らない話の方が興味を持てる。言ってみればニュースになる。

それでは読者の知らない話をどう面白く伝えるか?百田氏は読者がまったく知らないという前提で書く。零戦を、不可能を可能にした戦闘機、という多くの人が共感できるコンセプトで展開させる。小説の冒頭は以下の様に始まる。

あれはたしか終戦直前だった。正確な日付は覚えていない。しかしあのゼロだけは忘れない。悪魔のようなゼロだった。~『永遠の0

百田氏は「話術も訓練で上達する」と言う。雑談力には様々な要素から構成されるが、自分の興味があるテーマを選ぶ、というのは最重要な要素と言えよう。それが人の知らないテーマであれば更に良い。雑談力という幅広い分野にもプロフェッショナルな技があった。

蛇足

自分の自慢話、100%受けない

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