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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

自ら少数者を選択できるか?~『大衆の反逆』オルテガ・イ・ガセット(1930)

 大衆の反逆 (ちくま学芸文庫)

ホセ・オルテガ・イ・ガセット(1883-1955)はスペインの哲学者。

 1930年刊行の大衆社会論の嚆矢。諸権利を主張するばかりで、自らにたのむところ少なく、しかも凡庸たることの権利までも要求する大衆。(1930年、文庫は1999年) 

ヨーロッパは危機に直面している

今日のヨーロッパ社会において最も重要な一つの事実がある。それは、大衆が完全な社会的権力の座に登ったという事実である。大衆というものは、その本質上、自分自身の存在を指導することもできなければ、また指導すべきでもなく、ましてや社会を支配統合するなど及びもつかないことである。したがってこの事実は、ヨーロッパが今日、民族や文化が遭遇しうる最大の危機に直目していることを意味するわけである。(11ページ)

大衆とは

大衆とは、善い意味でも悪い意味です、自分自身に特殊な価値を認めようとはせず、自分は「すべての人」と同じであると感じ、そのことに苦痛を覚えるどころか、他の人々と同一であると感じることに喜びを見出しているすべての人のことである。(17ページ)

選ばれた少数者

自力で達成しえなくても、他の人々以上に自分自身に対して、多くしかも高度な要求を課す人のことである、・・・自らに多くを求め、進んで困難と義務を負わんとする人々であり・・・(18ページ)

大衆の反逆

今日の特徴は、凡俗な人間が、おのれが凡俗であることを知りながら、凡俗であることの権利を敢然と主張し、いたるところでそれを貫徹しようとするところにあるのである。・・・大衆はいまや、いっさいの非凡なるもの、傑出せるもの、個性的なるもの、特殊な才能をもった選ばれたものを席巻しつつある。(22ぺージ)

20世紀初頭のヨーロッパ

1800年から1914年の間に―つまり1世紀余の間に―ヨーロッパの人口は1億8千万人からいっきょに4億6千万人!に増大したのである。(68ページ)

われわれは、人間の種を自由主義的デモクラシーと技術という二つの原理で処理すれば、ヨーロッパ種はたった1世紀の間に3倍に増殖するという事実を経験的にえたのである。(71ページ)

第一次世界大戦後の今日、人々は、ヨーロッパはもはや世界を支配していないといい始めている。(186ページ)

大衆の反逆

大衆の反逆とは、物質的豊かさの恩恵を受けながら、それを当然のことと受け止め現状に留まり、少数者を排除しようとすることによって生じる。少数者自身が専門分野に閉じこもってしまうことによってその事態は加速される。

1930年のヨーロッパは米国と並んで大衆社会を実現しつつあった。その様な背景の中で発生した第一次世界大戦は“ヨーロッパの没落”の可能性を予見させていた。その後ヨーロッパはファシズム第二次世界大戦にさらされる。オルテガは「ファシズムが実は典型的な大衆人の運動」(172ページ)、「大衆は、国家という匿名の機械を通じ、またそれを手段として自ら行動する」(173ページ)と記している。

大衆の反逆は、残念ながらオルテガの指摘どおりヨーロッパに大きな不幸を生んだ。

オルテガは本書で少数者の行動が世界を善なる方法に変えること、その努力の重要性を説く。「日本の没落」がささやかれる今日、“自らに多くを求め、進んで困難と義務を負わんとする人々”への期待は大きい。

蛇足

社会を変えるのは少数者

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