毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

我々のビジネスは系統図のどこに存在するか?~『 系統樹思考の世界』三中信宏氏(2006)

 系統樹思考の世界 (講談社現代新書)

三中氏は進化生物学、生物統計学の研究家、系統樹思考とは何か?(2006)

 

 ダーウィンが提示した起源

生物は進化するという認識が根付くにつれて、「起源」という問題意識がしだいに強まってきました。いま見られる生物は、過去をたどればある「起源」すなわち「祖先」に由来します。過去に存在したであろうその起源(祖先)がわかれば、現在を理解することができる―チャールズ・ダーゥインが『種の起源』(1859年)の中で提示した・・・(進化とは)まさに「起源」というものが生物界の理解の根幹であることを宣言したマニュフェストでした。(17ページ)

進化は生物に留まらない

単純な事実とは―「進化」するのは<生きもの>だけではないということ。時間の経過とともに、生物と無生物の別に関係なく、自然物と人造物のいかんを問わず、過去から伝わってきた「もの」のかたちを変え、その中身を変更し、そして来るべき将来に「もの」が残っていく。私たちが気づかないまま、身の回りには実に多くの(広い意味での)「進化」が作用し続けています。(20ページ)

例えば活字

もっとも広く用いられている欧文書体(アルファベット)のひとつに「タイムズ」(1932年公表)があります。・・・タイムズ、キャズロン、ギャラモンなどローマン体と総称される欧文書体のルーツは、いまはイタリアのとある広場に残されている紀元2世紀の「トラヤヌス帝の碑文」に求められます。そこに刻み込まれた書体こそ、現在まで連綿と受け継がれてきた欧文書体の「祖先」です。(21ページ)

系統樹思考

もし実際に(例えば二つの活字の間に)「由来関係」が見つかり、系統樹が描けたならば、現在私たちが見ているもの(たとえば書体)の背後には過去からの系譜の流れがあるわけです。そして、その流れに沿ってさまざまな特徴の変化のありさまをたどることができるでしょう。つまり、系統樹はさまざまなもの(生物・無生物)を系譜に沿って体系的に理解するための手段です。(26ページ)

系統樹思考はアブダクションによって導かれる

理論の「真偽」を問うのではなく、観察データのもとでどの理論が「より良い説明」を与えてくれるのかを相互比較する―アブダクション、すなわちデータによる対立理論の相対的ランキングは、幅広い科学の領域(歴史科学も含まれる9における理論選択の経験的基準として用いることができそうです。(65ページ)

系統樹思考の世界

ダーウィンの進化論が生物界に与えた影響を今更指摘するまでもない。本書で著者はダーウィンの進化は非生物の領域にも存在することを指摘する。言われてみれば多くのものが従来あったものの改良であれば祖先があるのは当然のことである。

それではどうやって祖先を特定するか?アブダクションという推論で説明する。時間を遡ることができない以上、演繹法帰納法も当てはめることができない。三中氏は「系統樹の推定方法に関する理論」を研究する。生物の祖先も、活字の祖先も同様の方法で特定できる、ということである。

我々が事をするにあたって系統樹に当てはめてみる、そこには大きな意味がある。

蛇足

我々のビジネスは系統樹のどこに位置するのか?

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