毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

19歳の女性が教えてくれる、格好悪い大人~『南谷真鈴 冒険の書』南谷真鈴氏(2016)

南谷真鈴 冒険の書 LIVING WITH ADVENTURE 英訳付

日本人最年少でのエベレスト登頂、七大陸最高峰登頂を達成、そして、南極・北極・世界最高峰三極点到達をめざしている19歳の現役女子大学生、南谷真鈴さん。(2016)

 

私がやるべきは山

12歳のとき、ネパールの女性登山家、ニムドマ・シェルパさんについての新聞記事を読んでインスピレーションを受けたのです。彼女は幼くして両親を失くし、勉強したくてもできないほど貧しかった。でも、困難に立ち向かうことで、彼女と同じ孤児たちに何かいい影響を与えたいと思って山を始めたそうです。ニムドマさんは男社会の山の世界で大変な努力をして資金を集め、トレーニングをして10代で世界最高峰のエベレストに登ったのです。・・・いろいろなことに挑戦してみた結果、私がやるべきことは山なんだな、とわかったのです。自分の心を磨く場所としてとても適していると感じたのです。・・・私はいつか、絶対に、エベレストを登ってみようと誓ったのでした。(11ページ)

冒険の始まり

日本の高校3年4月のタイミングに合わせて帰国することになり、その秋に私は早稲田大学へ進学する方向に落ち着きました。今こそ、あのとき思ったエベレストへの夢を叶えようと思ったのです。それから2年弱、ものすごいスピードで、次々とセブンサミッツを含む山々に登りました。(12ページ)

エベレスト登山のベースキャンプ(標高5300m)にて

私のいた(エベレスト登頂の)チームのメンバーは元警察官だったり、軍の人だったりで、女性に非常に厳しい感じでした。年齢も上の方ばかりで、いちばん歳が近い人で35歳くらい。いかにも大金持ちという感じで、すごくエゴや自尊心が強いのです。「ここは小娘が来るような場所じゃない」といったオーラがあったし・・・難しい空気がよく漂っていました。・・・BC(ベースキャンプ)にはほかにも多数のチームが集まっており、これまでに世界の各地で知り合った人たちが別のチームに参加していたので、話をしに行きました。けれど、積極的に外に出ていたのは私だけで、ほかのメンバーは一切友達を作ろうとしないし、テントから出ず交流もしない。(98ページ)

冒険の書

本書は19歳の大学生、南谷氏が7大陸最高峰踏破までの記録である。2015年1月南米アコンカグア山から始まり、2016年7月アラスカ・デナリ山まで、アジア・ヨーロッパ・南北アメリカ・アフリカ・オーストラリア・南極の7つの山を1年半で制覇する。費用は自らスポンサーと交渉して調達している。

彼女は若干19歳とはいえ、13歳から志をもって登山を初め、16歳にしてエベレストのベースキャンプまで足を運んだ経験を持つ。偶然チャンスを得た訳ではなく、そこには意思の力があった。

19歳でセブンサミッツの登頂に成功するには多くの苦労があった。肉体的にも精神的にも厳しい条件の中だったことは間違いない。南谷氏はそれらは淡々と記述をする。そんな中で私は、エベレスト登山のベースキャンプでの記述、に心を動かされた。

南谷氏は、チームメートの中には“すごくエゴや自尊心が強い”人がいたと語る。19歳の彼女から見れば親の歳以上の人たちばかりである。エベレスト登山と言えば、社会的な成功を収めた人間がお金と時間をかけて挑戦する。そんな彼らの実態はエゴと自尊心に押しつぶされていた。我々は19歳の女性が感じているが通常口にしない不愉快を知る。

精神的に成熟していてしかるべき大人が実はそうではない。冒険も、精神的成熟も年齢にも関係ないことに気づく。大人がしてはいけないこと、若者の進路を遮ること。私も今まで恰好悪い大人だったことに気づく。

蛇足

冒険に年齢は関係ない

蛇足

  

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