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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

2070年イスラム教徒が多数派になるとき~『イスラム化するヨーロッパ 』三井美奈氏(2015)

 イスラム化するヨーロッパ (新潮新書)

三井氏は2015年まで新聞社のパリ支局長、多発するテロ、移民二世・三世の増加、押し寄せる難民―欧州は今まさに「イスラム化」の危機に瀕している。(2015)

 

西欧社会とイスラム教徒

イスラム教徒たちが西欧にやってきた時、彼らは希望に満ちていた。西欧は第二次世界大戦の経済復興期にあたり、産業を支える労働力として、南西アジア北アフリカから来るイスラム教徒たちは歓迎された。・・・西欧は戦後、「栄光の30年」と呼ばれる、長い経済成長を経験した。炭鉱やこれに関連した資源産業、さらに自動車産業など人手を必要とする大規模工業には、言語や習慣の違うイスラム教徒たちも、簡単に入っていけた。・・・2011年の英国勢調査で、イスラム教徒はロンドンの人口の12%を占めた。また、民間の推計によれば、パリやその郊外でも人口の10~15%をイスラム教が占める。(75ページ)

イスラム教は若い宗教か?

・・・「イスラム教は宗教改革を経ていない。だから欧州に適応できていない」という声が出た。欧州では、ローマ・カトリック教会の権威に対抗してプロテスタントが出現し、啓蒙主義の時代を経て、市民革命が王権神授説を倒対し、イスラム教は預言者ムハンマドとその弟子たちの時代を理想とし、コーランの教えを至上とする考え方から抜け出していない、という主張だ。(201ページ)

2070年以降イスラム教が世界最大の宗教となる

現在はキリスト教徒が世界人口の三割を占めて、あらゆる宗教の中で信者が最も多い。・・・2070年を境に、イスラム教徒は信者の数でキリスト教を追い抜く。

欧州(ロシアやウクライナを含む)で2050年、イスラム教徒は71百万人、現在の約1.5倍に増える。英国やフランスなど、西欧諸国ではキリスト教人口が半数を割り込む。・・・アジア太平洋地域でもイスラム人口は急増する。2050年には人口50億人のうち、3-4人に一人がイスラム教徒になるという。(202ページ)

西欧の失敗

第一に西欧の価値観をイスラム教徒に押し付けすぎたことだろう。(キリスト教宗教戦争の反省から)宗教間の摩擦を避けるため、政教分離をごり押しすれば、信仰を大事にするイスラム教徒が生きにくい社会を作ってしまう。・・・第二の問題は、イスラム教徒のコミュニティを「多文化主義」の名目で放置すること。・・・英国や北欧ではイスラム教徒の移民だけのコミュニティを認めた結果、過激派の温床を作ってしまった。(205ページ)

イスラム化するヨーロッパ

キリスト教イスラム教には約700年の差が存在する。イスラム教がキリスト教に比べ短い歴史しか持ってない。キリスト教現代社会と折り合いをつけるまでには血で血を洗う宗教戦争を経てのことである。西欧型社会がキリスト教の教義と折り合いをつける形で形成されたとすれば、イスラム教徒が西欧型社会に宗教的に順応できると考える方が理想的すぎる。イスラム教が未成熟あるいは好戦的である、と指摘するのはあまりに西欧的価値観に囚われている。

イスラム社会の人口構成、若者の比率と出生率の高さ、を考えるとこれからイスラム社会の拡張が続く。西欧とイスラム社会の時間軸は100年をはるかに超える時間軸で動いていることを実感する。

蛇足

ヨーロッパ化させようとしたイスラム、別の名を植民地主義

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