毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ブランドに必要なものとは?~『BMW物語―「駆けぬける歓び」を極めたドライビング・カンパニーの軌跡』D・キーリー氏(2004)

 BMW物語―「駆けぬける歓び」を極めたドライビング・カンパニーの軌跡

 キーリー氏は自動車アナリスト、BMWは1970年代に「究極のドライビングマシン」という広告コピーを作って以来、このメッセージを変更していない。(2004)

 

1959年BMWは倒産の危機に瀕していた

1959年、BMWは財政の深刻な危機に直面した。1952年に自動車事業に再参入して以来、ヒット商品を開発できずにいたせいだ。・・・ドイツ経済が軌道に乗り、中産階級が台頭してきた1950年代後期、BMWには価値で競合できる中間市場向けの車種がなかった。・・・そこに登場したのが、ドイツ有数の資産家で実業家のヘルベルト・クヴァントだった。・・・クヴァント兄弟はBMWの株式を30%取得して、会社の再建に取りかかった。上品で信頼感のある、人びとが欲しいと思うようなミドルクラス車を競争力のある低価格でつくること・・・こうして誕生した最初の車がBMW1500だった。(104ページ)

1961年から今のBMWは始まった

1961年のフランクフルト・モーターショーで発表された1500は、およそ30年前に作られたディキシーと、それに続くBMW3/15の流れを汲む最初のBMW社だった。大量生産型の実用的なスリーボックス・セダンだが、それまでのBMW車にはなかったシャープなラインが特徴だった。・・・車体はやや前傾ぎみで、フロント、リアともに鋭角的なフォルムはこのとき完成し、その“サメのような”特徴は、21世紀に発表されたモデルにさえ受け継がれている。(105ページ)

1974年米国の広告代理店がキャッチフレーズを作る

BMWのハンドリングは、他の類を見ないほどすぐれている。・・・一貫してハンドリング性能と爽快な走りを強調する宣伝戦略を提案したんだ。・・・「究極のドライビング・マシン」。このキャッチフレーズはその後、自動車業界の数々の名文句の中でもっとも長く愛用されることになった。・・・BMWはサイズが小さいだけでなく、内装も素朴だったからね。いっそ、BMWの真価は内装ではなく、ボンネットの下のエンジンと足回りにあると強調したほうが効果的だと判断されたんだ。(176ページ)

f:id:kocho-3:20161102093318p:plainHistory and Tradition

BMW物語

日本でも抜群の人気を誇るBMWの創業は1896年である。しかし現在のBMWは1961年から始まるといってもいいであろう。僅か55年でここまでのブランドを築いた。

日本のBMWのキャッチフレーズは「駆け抜ける歓び」、1974年に始まった「究極のドライビング・マシン」の系譜に繋がるコーポレートアイデンティティを一貫して使っている。伝説の様でありながら、単に広告代理店がひねり出したものである。

このことはブランドは思ったより早く構築できることを教えてくれる。ブランドを早く確立するにはイメージの統一が必要である。そのイメージも最初から決まっていたというより、ともすれば商品の欠点を強調したものである。BMWの商品は広告代理店の作ったフレーズをそのまま体現し続けている。ブランドとは“ぶれないこと、続けること”、BMWはそのことを教えてくれる。

蛇足

ブランドとは欠点のこと

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