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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

”遠心性コピー”という言葉を知っていますか?~『人口知能のための哲学塾』三宅陽一郎氏(2016)

人工知能のための哲学塾

三宅氏はゲームAI開発者、人工知能は「私」というものを持ちうるのか? そうならばそれはいかにしてか? 「世界」とは何か? そして「身体」とは何か?(2016)

 

遠心性コピー

遠心性コピーは、1953年に医学の研究の中で発見されました。遠心性コピーを使うことで、実際の運動のときに起こす感覚やフィードバック、目標とする軌道との照合というのを脳はずっと行っています。(262ページ)

 

 種々の感覚器官を通して入力される感覚信号の変化は、環境が変化したために生じる場合だけでなく、自分自身の行なった運動の結果として生じる場合があるが、生体はどちらの原因によって感覚信号の変化が引き起こされたかを区別する能力を有している。

(例えば)われわれは動く対象物を見るために滑らかに眼を動かしてそれを追跡する。その時、追跡対象以外の静止物に由来する背景の網膜像は眼の動きと反対の方向に流れるように動くが、われわれはその動きを外界の動きとは感じない。この視知覚は、眼球運動によって起こる網膜像の動きの信号が“網膜外に由来する信号“(=脳内で生成される遠心性コピー)によって補正されることによると考えられている。

遠心性コピー - 脳科学辞典

 

どうしてロボット歩きになるのか?

人間は常に自分の身体のイメージを持っています。ゲームキャラクターも、ほとんどのロボットも、身体を動かすまでは精密なことをしていますが、頭の中に自分の身体のイメージ、いま自分がこういう状態になっていて、次にこうしないと自分がコケる、といったイメージは持っていません。常に、起こってからのアクションです。たとえば、敵のキャラクターに突かれて、ある程度転んでから、それに対するアクションをします。予測というものがないわけです。不自然な動きになるのはそのせいなのです。(266ページ)

人間がやっていること

「これは重い」といわれて身構えて持つと案外重たくない、「軽いだろう」と思って持つと重いというようなことがあります。ある程度の遠心性情報が行く前の予測をしているしているわけです。・・・腕を動かすと、身体の変化が求心性情報として得られ、遠心性コピーとその対応が自分の身体が自分のものであるという感覚を与えます。我々が自分の運動を知覚できるというのは、ある程度そういったシミュレーションによって予想しているからです。(271ページ)

 

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人工知能のための哲学塾 第5夜「メルロ=ポンティと知覚論」 - YouTube

 

人口知能のための哲学塾

人口知能は意識内の論理操作においては人間を圧倒する能力を持つ。しかしながら人間の能力は意識下に無意識の世界があり、身体を含む環境の上に立脚している。

三宅氏の問題意識はTVゲームのキャラクターに自律的な意識を持たせることができるか?、という点からスタートする。哲学が人間の思考・行動を制御しているOSの様なものを分析するものだとする。そうなるとゲームキャラクターも人間の哲学と同様のロジックで行動できることが望まれる。

その中の一つの議論が身体における遠心性コピー。人間は脳内で遠心性コピーを生成し、その結果と実際の行動結果を比較している。キャラクターにはこの仕組みが無いからロボット歩きになってしまう。キャラクターが身体性を習得するにはかなりの時間がかかるであろう。この事は、むしろ人間自身をより良くしるのに役立つ。

我々は無意識のうちに、あるいは外部から意図的に環境情報を与えられる。実際に身体を動かす前の段階で我々の身体は既に環境情報に反応してしまっているのである。思い込みが行動を制約する、と言ってもいいであろう。それでは環境情報を自分の意思と適合するように整備したらどうなるか?我々の行動はより効率的になるであろう。

「できると思えばできる。」、これは遠心性コピーを活用しているとすれば合理的なのかもしれない。

蛇足

ゲームキャラクターとは、画面の世界で動くAIロボットである。

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