毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

どうしてジャングルの破壊は終わらないのか?『生物多様性〈喪失〉の真実――熱帯雨林破壊のポリティカル・エコロジー』JHヴァンダーミーア氏×Iペルフェクト氏(2016)

 生物多様性〈喪失〉の真実――熱帯雨林破壊のポリティカル・エコロジー

 熱帯林、バナナのモノカルチャーと先進国をつなぐ環境破壊の原因ネットワークを描く。(2010)

  

熱帯雨林生物多様性の重要性は誰でも気づくが、、、

新製品を生む可能性、炭素吸収源としての効用、その他、熱帯雨林と聞いてすぐ思いつく実用的な長所をすべて無視したとしても、雨林の生物多様性を目撃すると深く心を打たずにはいられない。熱帯雨林は地表の約7%を覆っているにすぎないが、地球全体の生物多様性の50%以上を占めていると考えられる。・・・われわれ人間も生物の一員であることに気づき、生きている親類が熱帯雨林にいて、しかもその雨林が急速に破壊されはじめているとわかれば、(親類が心配でたまらないのと)同じ気持ちになるのではないだろうか。(196ページ)

土地のない農民が主犯ではない

農民が雨林を切り倒しているというイメージは、過去において強力なものだった。実に乱暴な話だが、このイメージが人々を、人口過剰が森林破壊の元凶だという新マルサス主義理論のような、さまざまな間違った分析に駆り立てている。・・・土地のない農民が実際に熱帯雨林を切っているという観察は正確だ。・・・南側諸国が機能する方法を決定づけている政治経済的構造が、そもそも否応なく土地のない農民を生み出しているからだ。(240ページ)

途上国は発展していない 

(先進国のアナリストは)南側諸国も、先進国とまったく同様に、いずれは発展を遂げるものと思っていたのである。・・・時がたてば事態はかわるのだという、この「時間」仮説は、長期間にわたって(アナリストに)根強く支持されていた説だった。だが第二次世界大戦末期ごろにはもう、南側諸国は発展途上どころではなく、むしろ逆の傾向が強いことが明らかとなった。・・・現在もっともよく知られている説は、従属理論というものだ。・・・南側諸国の低開発状態は歴史の偶然や地勢条件の悪さではなく、先進国が発展を遂げたことの必然の成り行きだととらえる説である。(107ページ)

従属理論の分析

北側諸国の工場のオーナーたちは、北側諸国の労働階級が総じて経済的に健全であることに関心があり、したがって、この階級の消費力を維持することに対して社会的なプレッシャーがある。・・・(だが南側諸国の農園主である)ブルースにとっては、(農園の労働者である)カルロスが綿花やバナナや砂糖を買うことができるかどうかは、どうでもいいことだろう。(110ページ)

経済のグローバル化が土地の無い農民と熱帯雨林の破壊をもたらす

先進国では製品を生産するための労働力と製品を購買する労働者の市場はリンクをしている。それに対し途上国では輸出産品を生産するための労働力は単なるコストに過ぎず、彼らの持つ購買力を当てにはしておらず、分断されている。従って経済のグローバル化が進めば進むほど、途上国では労働の交易条件の悪化が進行していく。

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私はアジア諸国が工業化によってテイクオフしていくのをみて、いずれ世界の国々が発展するものだと思ってきた。しかし中南米まで視野を広げるとそれは正解とは言えなくなる。世界の国々は既に大きなグローバルなネットワークに飲み込まれている。途上国は既に従属してしまっているのだ。

途上国の多くが工業化を希望する理由が初めて理解できた。一次産品に依存する限り、現在の因果関係から抜け出せないのである。

蛇足

バナナの価格は上がらない

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