毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

DNAを編集できるメスが誕生していた!~『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 』小林雅一氏(2016)

 ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 (講談社現代新書)

小林氏はIT・ライフサイエンスのリサーチャー、私たちの顔、身長、体型、性格、知能、運動能力は望み通りに変えられるか?これらを操作する遺伝子工学生命科学の分野でいま、過去に例を見ない驚異的な技術革新が起こっていて、それこそがこの「ゲノム編集」だからだ。(2016)

 

クリスパーは大腸菌の中から見つかった

バクテリアのDNAには「クリスパー」と呼ばれる特殊な塩基が存在していた。・・・当初(1980年代後半)、その働きや仕組みは不明だったが、2005年頃までには、「クリスパーはバクテリアなど微生物に備わる原始的な免疫システムではないか」との見方が科学者たちの間で生まれていた。(126ページ)

クリスパーとは「規則的に間隔を置いた短い回文の反復」

(クリスパーとは)せいぜい数十文字の短い回文(上から読んでも下から読んでも同じ)が、一定の間隔(スペーサー)を置いて繰り返し出現する塩基を指す。その間隔の部分(スペーサー)には、回文とは全く異なる構造の文字列が存在する。(129ページ)

スペーサーは仇敵の情報

クリスパー内部に存在するスペーサーは、バクテリアに対し、過去に自分を攻撃したウィルス、言わば仇敵を知らせるための情報だったのだ。・・・次の同じウィルスと接触したとき、このバクテリアはスペーサー部分の情報(塩基配列)と照合して、これが自分の敵であることを認識する。そして待っていました!とばかりにウィルスを先制攻撃し、これをバラバラに切り刻んで殺してしまうのである。(133ページ)

クリスパーの機能

ウィルスのDNAを狙った場所で切断するクリスパーのメカニズムが、単にウィルスのみならず(私たち人間を含む)動物や植物など、あらゆる生物のDNAに適用できるかもしれないと考え、それを実験で証明した。さらにDNAを切断した場所に、「ある長さの塩基配列」を挿入し、そこから再びDNAをつなぎ合わせることもわかった。(138ページ)

クリスパーは使いやすい技術

従来の遺伝子組み換え技術は「100万回に1回の成功率」といったほとんど偶然(運)に頼ったような確率的手法だった。これに対し、クリスパーでは(科学者が)DNA上の狙った遺伝子をピンポイントで切断したり、改変することができる。・・・実際のクリスパーは、それに必要な化学成分を含む「試薬(液体)」である。科学者らは、この試薬を様々な生物の受精卵など細胞に注入したり、場合によってはシャーレ(ペトリ皿)に入れた細胞にかけるだけで、ゲノム編集を行うことができる。あらかじめ狙った通りにDNAを切断したり、改変できたかどうかは、この作業の2~3日後には知ることができる。(21ページ)

クリスパーの持つインパク

(例えばITとクリスパーを融合しようとするGoogkeは)最先端の人工知能によって突き止めた病気の根本原因を、「DNAの(外科手術用)メス」とも呼ばれるクリスパーによって遺伝子レベルで手術する研究に乗り出す。(7ページ)

ゲノム編集とは何か?

従来の遺伝子組み替えは組み換えと言いながら100万回に1回程度の確率しか持たない効率の悪い技術であった。クリスパーはその効率を飛躍的に高める。現時点では100%とまでは行かないまでも99%以上という今までからみれば100万倍効率的になった技術である。

DNAのメスと言われるクリスパーの技術と遺伝子情報のIT処理を組み合わせれば、500歳まで生きることも夢物語ではなくなるという。クリスパーによってゲノム編集を行うことは人間の生命に直結する最大の欲望であることは間違いない。ゲノム編集の持つインパクトはすさまじく大きい。

蛇足

100年では人生設計短すぎ

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