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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

結果を出し続けるということ~『あきらめない心: 心臓外科医は命をつなぐ』天野篤氏(2018)

あきらめない心: 心臓外科医は命をつなぐ (新潮文庫)

  天野氏は心臓外科医、あきらめは患者の死、だから絶対に負けられない。30年にわたり7200人以上の手術を執刀。(単行2015、文庫2018)

 

心臓手術とは

心臓の出口の大動脈を鉗子(かんし、はさみのような器具)で挟んで遮断すると、心臓の血流が止まる。血流が途絶えた心臓に心筋保護液を流し込んだら、もう心臓は動かない。その心臓にメスを入れるのだ。・・・引き戻せない。治さなかったら、心臓は生き返らない。患者さんの命がかかっている。ひたすら前に進んで治していかなければならない。(26ページ)

心臓の手術は、地獄の閻魔さまとの闘いだ。敗退はできない。何があっても患者さんをこの世に連れ戻さなければならない。手術の中にある命の分岐点と、生と死の天秤棒。それを意識しながら手術をすることがいかに重要か・・・。(29ページ)

手術とは手と脊髄反射の仕事

短い手術で3.4時間、長い手術だと10時間を超えることもある。そういう手術を1日にいくつか掛け持ちすることも多い。・・・実際のところ、あまり疲れない。理由は頭を使わないからだ。・・・そもそも手術は首の下でやる。いわば手を脊髄反射の仕事だ。目から入った情報は反射的に手に伝わって、勝手に手がやるべきとをやってくれる。ドラムを叩くのと同じ。一種の自己運動。その連続で手術が進行する。・・・手術はだいたい8割から8割5分は予想どおりに行く。しかし残りの1割5分から2割は「あれっ」というような予期せぬことが起こる。・・・頭が高速で動きだすのは、そういうときだ。(176ページ)

幽体離脱する

(困難な局面では)あたかも幽体離脱をするかのようにそこから離れ、天井のあたりから手術室の光景を俯瞰するような感覚になる。すると、その場の状況が実に冷静かつ客観的に見えるようになる。・・・問題の解決法はきっとある。過去のたくさんの経験の中に必ずヒントはあるはずだ。それを探し出せ。・・・難局に陥るともう一人の冷静な自分が出てきて、手術をしている自分にいろいろと指示を出してくる。そのやりとりの中から、やるべきことや進むべき方向が見えたり、苦境を乗り切るアイデアが出来てたりする。・・・こんな分身が登場する目的は、ただ一つ。僕に心臓外科医としてクオリティの高い仕事をさせることなのだろう。(178ページ)

一途一心

「鉄板のように確実な出来上がりの手術を100例続けると、101例目にはどんな些細な異常でも見つけられるようになる。」一つのことに力を注ぎ、高い質を求めて毎日がんばっていると、別にそれをめざしたわけでもないのに自然と身についてくる感覚というものがある。それは経験に裏打ちされた“勘”のようなもので、・・・危険を事前に察知させてくれたり、苦境を乗り切る力を与えてくれたり、また新たな発見へんと導いてくれたりすることも多いのだ。これは「一途一心」のご褒美だと、僕は思っている。(265ページ)

あきらめない心

天野氏は30年にわたり7,200件の心臓手術を行ってきた。結果を出すことにコミットし、世界一を目指すチームを率いてきた。「あきらめは患者の死」、これを背負う覚悟で基本を大切にし同じ動作を反復する。少しでも高みを目指す。天野氏は最終的には患者への愛であるという。心臓外科医が特別な天職なのではない、天野氏は結果を出して天職にしたのである。

蛇足

30年で7200件、1年を250日とすると0.96件。ほぼ毎日心臓手術!!を行ってきた。

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