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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

獄中記はどうして興味をそそるのか?~『暗黒・中国」からの脱出 逃亡・逮捕・拷問・脱獄』 顔伯釣氏×安田峰俊氏(2016)

 「暗黒・中国」からの脱出 逃亡・逮捕・拷問・脱獄 (文春新書)

 顔伯釣氏は10万人を動かした中国最大の民主化勢力の元幹部、編訳の安田氏はルポライター、 逃亡2万キロの全記録(2016)

 

 

現代の中国

現代中国を襲う深刻な社会問題は、中進国のジレンマといった簡単な言葉で解釈してはならない。経済領域での改革のみならず、社会領域の変革ことが真に重要な解決策だ。公民社会(市民社会)を建設し、民主的な憲政耐性を実現することこそ、間違いなく火急の課題である―。(244ページ)

近年は共産党当局による言論統制と経済面における成功ゆえに、中国の社会面における後進性や社会矛盾は、ある程度において覆い隠されているようになってもいる。

だが、生活水樹の不断の向上と、国外との接触の深まりにより、中国の人々は物質生活上の満足のみならず、自然環境や人文環境・社会制度を変革する必要性を喫緊の課題として実感しはじめている。(251ページ)

死刑囚と同居の収監生活

私の名目上の罪状は「群衆を集めて公共秩序を乱した罪」だ。本来は比較的軽微な罪で、殺人犯と一緒に収監されることはまずない。・・・ここで身を助けたには、たまたま知っていた易の知識である。はじめ、暇つぶしに牢名主の趙の運勢を診てあげたところ、やがて娯楽に飢えた囚人たちが争って占いを求めてきたのだ。死刑囚ですらも自分の将来を知りたがった。こうして占いを続けるうちに、私は獄内にいた17-18人の全員とそれなるに仲良くなった。・・・私は拘置所内でも、3日から5日に1回の割合で呼び出され、従来と同じような尋問を何度も受けた。・・・毎回くたびれて戻るたびに、獄舎では囚人の誰かが決まって私の分の昼食を残しておいてくれた。尋問の苦労をねぎらう粋な心づかいだった。たとえ獄中でも、人間の友情や優しさは存在する。これは数少ない嬉しい発見だった。182ページ)

 中国の問題点

著者は中国共産党出身の大学助助教授であり、専門は経済史。著者の現代中国への分析は専門からの論理的分析を感じさせる。

著者は中国の問題を「イデオロギーの面で言えば、中国共産党が現在もなおマルクス・レーニン主義の統治思想を依然として堅持し、人類の普遍的価値観と全面的に対抗している点が挙げられる。」(246ページ)と書く。経済では自由化が進んだなかで、この様な分析が今更ながら存在すること驚く。更に言えばトップの政治家でもない現代の大学の学者が、亡命をしようと決断した事実に驚く。

本書は逃亡から逮捕、収監の手記である。獄中でのエピソードは人間の持つ本質的な欲求に思い至る。人間は人と思いを共有しないと生きてはいけない。それは世界のどこにおいても、今も昔も変わらぬ真実である。

我々の住んでいる地球は、様々な意見を持つ人々がいても、本質的に共感しあいたい人々の集まりなのである。

蛇足

完璧な絶望は存在しない。

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