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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

豊かさに必要なもの、それは”素直”~『「豊かさ」の誕生(上) 成長と発展の文明史』W・バーンスタイン氏(2015)

「豊かさ」の誕生(上) 成長と発展の文明史 (日経ビジネス人文庫)

 

バーンスタイン氏は投資理論の研究家、人類に“持続的な富の増大"をもたらした4条件に迫る!(原書は2004、文庫は2015)

 

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どうしてオスマン帝国は衰退したのか?

軍事技術と工場生産を別にすれば、オスマン帝国はヨーロッパ事情に対して、徹底して無関心だった。・・・この知的好奇心の欠如は、イスラスの教義がユダヤ教キリスト教を真に到達する過程にある不完全な信仰と見なしていることから来ているのかもしれない。「キリスト教の教義の中で真理だったものはイスラムに組み込まれた。イスラム教にないものが、キリスト教の中にあるとすれば、それは誤りだからだ」というわけである。軍事力と経済力にいくらすぐれていても、ヨーロッパ人はどこまでいってもイスラム教の光の当たらない哀れな異教徒なのだ。(146ページ)

現代イスラム社会に欠けているもの

現代イスラム社会では、科学的合理主義、資本市場、通信・輸送手段の発達という三要素は、すでに揃っている。イスラム諸国が成長し、繁栄するのに唯一欠けているのは、私有財産権と法の支配なのである。・・・今日のイスラム諸国のほとんどは警察国家で、法がいくら厳格に執行されようとも、国家権力がチェックされない以上、経済成長の観点ではほとんど意味がないのである。(150ページ)

イスラム社会は宗教との分離が必要

イスラム世界が本当に近代化を遂げたいと願うのであれば、ヨーロッパが近代化の過程でたどったのと同じように宗教を捨て去り、行政サービスに基づく社会を樹立しなければならないだろう。

この変化を完成させるには数年とか数十年ではなく、何世紀という時間がかかるはずだ。・・・イギリスもフランスも、第一次大戦後にオスマン・トルコから新たにアラブ諸国を「独立」させ、これらの国々に議会制民主主義を打ち立てようとしたが惨めに失敗している。(152ページ)

「豊かさ」の誕生

本書でバーンスタイン氏は経済成長が私有財産制、科学的合理主義、資本市場、輸送・通信手段の4要素が揃ったとき経済成長を始めると説明する。

本書の中でイスラム社会の停滞について私有財産制が欠如していることを指摘する。西洋文化圏に生きてきた我々にとって本書の主張は説得力を持つ。

豊かさの為に必要なことは「素直」

バーンスタイン氏は「経済の繁栄が民主化の最高の原動力であるとすれば、自由主義的民主主義の拡大が続くことは間違いない」(313ページ)。その後の2008年リーマンショックを鑑みると、西欧型価値観にのみ立脚した意見との見方もあり得よう。西洋社会、少なくともヨーロッパは明確に血を血で洗う宗教戦争、二度の大戦を経て、政教分離を選択した。その意味でイスラム社会はこれから自らの手で時間をかけて政教分離、最終的には西欧型私有財産制の確立に動くであろう、(あるいは動いて欲しい)という指摘は意味を持つ。

これから認識すべきは、夜郎自大(やろうじだい)に陥ったとき成長を止めるということ。これは国家でも、社会でも、企業でも、そして個人でも変わらない。

蛇足

夜郎自大の逆さま、素直((C)松下幸之助

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