毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

新しいテクノロジーには既存価値観の変更が必要~『IoTとは何か 技術革新から社会革新へ 』坂村健氏(2016)

IoTとは何か 技術革新から社会革新へ (角川新書)

 

坂村氏は分散型コンピューティングTRONの提唱者、 「IoT=モノのインターネット」で、私たちの社会や生活は、一体どう変わるのか。(2016)

 

IOTとは何か?

現実世界全体を組み込みシステムにするというのは、基本的にはこの電気炊飯器の例と同様に、世界全体が人間の入力や調整なしに、コンピューターが状況を判断し、最適な制御を計算し、さまざまな社会プロセスを実行するということを意味する。人間の判断・制御の負担がコストとなるため行われていないような、細かい社会プロセス最適化は数多く存在する。それらを最適制御することによる効率化は、積もり積もって安全・快適と省エネ・省資源の両立を可能にする鍵になるだろう。(31ページ)

20世紀と21世紀

自動車、飛行機、電力網、原子力、電話、無線通信、人工衛星、テレビ、コンピューターからインターネットまでー19世紀後半から20世紀にかけて生まれたイノベーションを並べると、何よりその進化のスピードに驚。・・・それに比べると21世紀に入ってからの科学技術の進歩は小粒―というか、世界の風景を変えるようなものがないのは確かだ。・・・20世紀の人が見ても大して代わり映えのしない通勤電車の中では、半数以上の人が小さな板を持って指でなぞっている。・・・最初のiphoneの登場が2007年だから、電車で半数以上の人がスマートフォンを使ってる状況まで5年もかからなかったという、その普及率の伸びは十分に驚愕に値する。・・・大きな進歩は主に情報の世界で起こっているのだ。21世紀になって科学技術の進歩が小粒になったのではなく、変化が起こっているのがいわば画面の中だから、実世界はあまり変わっていないように見えているだけだ。(230ページ)

ユキビタスからIOTまで

坂村氏は「どこでもコンピューター」、ユビキタス・コンピューティングを提唱、様々な機器に使うOS、TRONの提唱者として知られる。はやりの“IOT=Internet of Things“とはユビキタス・コンピューティングの延長線上にあり、30年間から連なるユビキタスと捉えれば今は一時のブームから回復、そして拡大期にあたり、IOTと括れば流行期でありブームの最中であるという。

IOTとは何か?~技術革新から社会革新へ

本書の副題は技術革新から社会革新へ、である。その背景は現在の技術革新は画面の中、すなわち情報の世界で発生しているからである。物の世界から情報の世界のシフトはクローズドからオープンネットワークへ、性能保証(ギャランティー)から最大努力(ベストエフォート)へ変化している。

情報の世界で必要なのは社会革新へのコンセンサスであると坂村氏は言う。ユビキタス・コンピューティングからIOTを成立させるのは技術ではなく、社会の強靱さ、である。我々の慣れたクローズドネットワークからオープンネットワークに踏み込む勇気が必要となる。

IOT=、画面の中で起きている情報世界は、世界の最適制御によって我々により無駄のない世界を提供してくれようとしている。私は世界はもっと効率的に、豊かになれる余地があると信じる。

蛇足

鉄道がクローズドなら、道路はオープンネットワーク

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