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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ウィルスと人間は情報を共有している~『ウイルスは生きている』中屋敷 均氏(2016)

ウイルスは生きている (講談社現代新書)

 中屋敷氏は、染色体外因子の研究家、私たちのDNAの中には、ウイルスのような遺伝子配列が多数存在し、生物進化に重大な貢献をしてきたことが解っている。(2016)

 ※染色体外因子とはウィルスやトランスポゾン(動く遺伝子)のこと

 

ウィルスの特徴

ウィルスは細胞膜に囲まれた細胞構造を保有せず、タンパク質を合成するリボゾームも持たないが、固有の遺伝情報(ウィルスゲノム)からなる核酸を保有する存在ということになる。・・・(遺伝子情報を司る核酸を保護するのが)タンパク質で出来たキャプシドという構造である。(61ページ)

物質の進化

情報という観点でこのダーウィン進化論を見た場合、重要な特徴はこれまで得られている「有用な情報」、すなわち親が持つ形質を基本的には受け継いだ上で、そこに新たな変異を加えていることである。・・・言葉を変えれば、有用な情報の積み上げ、つまり蓄積が起きているということである。

生物進化が進んだ現在においても、ダーウィン進化を受けている実体は実は物質(DNA)であり、生命が誕生した化学進化の時代から本質的にはずっと同じこと(物質のダーウィン進化)が続いていると考えることができる。ここで貫かれているロジックは一つであり、その環境で増殖できるものが増え、より安定して効率よく増える方向へと変化していく、ということである。それが物質から生命進化に至るまでずっと変わらずに続いているのかも知れないのだ。(163ページ)

ウィルスと進化

本書の主役であるウィルスであるが、ウィルスは例外なくDNAやRNAといった「進化のロジック」を内包した装置を保有しており、「生命の鼓動」を奏でている存在である。この装置には次々と新しい機能を生み出す性質が備わっており、我々が毎年感染型の違ったインフルエンザに悩まされるのはそのせいである。(164ページ)

f:id:kocho-3:20160503093600p:plain生命は遺伝情報を水平に共有している。

ウィルスは生きている

ウィルスは一般的には生物の範疇外である。生物との最大の違いは「ウィルスはエネルギー生産といった生命活動に必須の代謝を行わない」(175ページ)であろう。タンパク質を合成するリボゾームを持っていない。しかしウィルスは遺伝情報を蓄えそれを進化させている。

1918年のスペイン風邪は全人口18億人のうち3割の6億人が感染、2000~5000万人が死亡。それは現在の鳥インフルエンザウィルスであり、現在の鳥インフルエンザウィルスはスペイン風邪がウィルスの進化により弱毒化したものである。

科学界では「キャプシドを持つ生物」(ウィルス)と「リボゾームを持つ生物」(ウィルス以外の生物)に二分させる、つまりウィルスを生物に加えるべきだという主張がされている。もっと言えばウィルスとその他の生物の垣根は極めて曖昧である。ウィルスとその他の生物の間で水平方向に遺伝情報の交換が行われている。著者の主張は明快である、ウィルスは生きている。

蛇足

人間とウィルスも遺伝情報を共有している

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