毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

生命にとって必要な情報は既に存在する~『マンモスのつくりかた: 絶滅生物がクローンでよみがえる 』ベス・シャピロ氏(2016)

マンモスのつくりかた: 絶滅生物がクローンでよみがえる (単行本)

 シャピロ氏は「マンモスパーク」実現に向けて日夜奮闘する科学者が、現実味から問題点まで、あなたの疑問に熱く答えます。(2016)

 

脱絶滅

復活させたマンモスのDNAのおかげで、マンモスがかつて生活していた場所で生活でき、マンモスが活動していたように活動できる動物が誕生すること-を脱絶滅の成功と呼びたい。たとえ、その動物のゲノムがどう見てもマンモスよりゾウに近かったとしても。(34ページ)

脱絶滅がもたらすもの

重要なのは、現在、ゾウの細胞をいじってマンモスの遺伝子を発現させられるということだ。数年以内に、これらマンモスの遺伝子は現存するゾウの体内にたんぱく質を作るかもしれず、結果的に、そうした細胞でできたゾウはもはや、熱帯地域の減少しつつある生息地に閉じ込められずにすむかもしれない。代わりに、シベリア、アラスカ、ヨーロッパ北部の広い空間を自由に歩き回り、これらの地域に8000年間失われていた活動的な大型草食動物による恩恵をことごとくもたらす。(271ページ)

脱絶滅の方法①

ケナガマンモスなど絶滅種の完全なゲノムを解析するために保存状態のよい骨を見つける。それからゲノム配列を調べ、現像する進化上の近縁種(のアジアゾウ)のゲノム配列とマンモスのゲノム配列の違いを特定したうえで。ゾウのゲノムを微調整する実験を設計してDNA塩基を1度に数個づつ変え、そのゲノムがゾウよりマンモスに近くなるようにする。それから、微調整でマンモスに似せたゲノムを含むこの細胞を取り出し、発達させて胚にする。最後に、その胚を雌のゾウに移植すれば、約2年後に、ゾウの母親がマンモスの赤ちゃんを産む。(32ページ)

脱絶滅の方法②

マンモスをよみがえらせるには、ほかならぬ自然が行なう遺伝子工学の過程を利用すればいい。わたしたちはただ、最も毛深くて、最も寒さに耐性がある既存のゾウを何頭か見つけて、それらをお互いに交配するだけ。数世代も経てば、DNA配列の解析技術にいっさい頼ることなく、シベリアで生息できるゾウを生み出せるだろう。(143ページ)

マンモスのつくりかた

最後のマンモスが絶滅したのは3700年前である。マンモスがアジアゾウから遺伝的に分岐したのは250~500万年前であることを考えると、ついこの間のこと、と言っても良いであろう。

我々は既に、バイオテクノロジーにより絶滅した生物の遺伝的性格を現在の生物に移植する方法を確立した。絶滅しようとしている生物を、他の生物の遺伝的多様性を使って現在の環境に適合させることも可能である。

ゾウは絶滅の危機に直面している。行動的で社会性のあるゾウは動物園の閉鎖的空間では寿命が短くなるという。ゾウがシベリアの寒冷地に住むことができたら住空間を確保することができる。マンモスに似たゾウがシベリアの大地を闊歩する、私は想像するだけでわくわくする。

生命にとって必要な情報は、生命のどこかに記憶している。

蛇足

マンモスとは“大地に住むもの”という意味のタタール語のママントゥに由来するといわれる。

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