毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

デジタル生命を進化させてわかる、生物の遺伝システム~『デジタル生命の進化』和田健之助氏(1994)

デジタル生命の進化 (岩波科学ライブラリー (11))

 和田氏は生物情報学の研究家、遺伝子の持つ複製,交叉,突然変異といった特性をそなえた「生命」を計算機の中で実現したとき,それはどのように進化するか?(1994) 

ネオ・ダーウィニズム

よく知られているダーウィンの進化論は、ラマルクの提唱した獲得形質の遺伝の概念を含んでいました。つまりあるが個体が環境に適合する過程で獲得した形質が、次世代の子孫に遺伝するものと考えていました。・・・より環境に適応するために学習したり筋肉を強化したりしても、その効果は一世代限りで、精子卵子までは遺伝情報として伝わらないのです。・・・ダーウィンの進化論からラマルキズム的要因を完全に取り除いき、自然淘汰の万能性を強調したネオ・ダーゥイニズムを確立しました。その後、遺伝機構の詳細が明らかになって、生殖質の独立性と連続性は実験的にも確認されています。(6ページ)

遺伝的情報アルゴリズムから見ると

遺伝的アルゴリズムの研究から見ると)進化の初期や環境の激変時においては、複製機構の違いによる不均衡が積極的に作用して、進化速度を早める働きをしたのではないか、と考えられます。また、進化が進んだ後でも、細菌などのように厳しい環境下にさらされている生物では、もし複製装置や修復装置が変異して不均衡性が強まれば、新しい環境への適応能力が増して、その変異が有利に働くものと考えられます。(91ページ)

遺伝子不均衡理論のアプローチから見ると

(遺伝子不均衡理論を前提にして)淘汰的制約から解放された時期に、各個体は遺伝子重複と中立突然変異によって遺伝的多様性を獲得し、淘汰の圧力が強くなった時期に、その世代の環境にもっとも適した個体が選別されると考えるのです。(98ページ)

遺伝子工学システムとしての人間

約60兆個の細胞からできている私たちの身体は、いうまでもなく超並列システムです。そして、その細胞のなかには約30億文字からなるプログラムが書き込まれていて、DNAや細胞など、さまざまなレベルで自己修復を行いながら安定に機能しています。(130ページ)

デジタル生命の進化

本書では遺伝的アルゴリズムをそなえた「生命」をコンピュータに生成する研究からのフィードバックである。遺伝的アルゴリズムとは生物のい進化機構を模倣した最適化アルゴリズムのことである。

著者の和田氏はコンピュータ・アルゴリズムの見地から進化論について簡素に言及する。進化論は時間的スケール、対象範囲(遺伝子レベル、個体レベル、集団レベル、種のレベル)によって数多くの理論がある。それでも進化論を遺伝子でで言えば、「遺伝子不均衡理論であり、遺伝子重複と中立突然変異を通じて遺伝子の多様性を獲得してきた」とまとめることができる。

我々なジャンクな遺伝子こそが将来の変異のための材料なのである。

蛇足

ジャンク遺伝子を保有する物理的負担は小さい

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