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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

西洋絵画は遠近法と平面性の間を振れている~『遠近法(パース)がわかれば絵画がわかる 』布施英利氏(2016)

遠近法(パース)がわかれば絵画がわかる (光文社新書)

布施氏は美術批評家、物体の重なり、色彩の重なり、陰影の重なり、線がもたらす錯覚……。 多様な「遠近法」は、私たちに奥深い二次元・三次元の世界を見せてくれる。

 (2016)

絵画の特徴とは何か?

20世紀、ピカソ以降、二次元の美術は、より徹底して展開していきます。・・・20世紀を代表する美術様式である抽象絵画もフラットな色面という二次元性を多用しました。・・・いろいろな芸術の中で、絵画だけに独自のものは平面性(=二次元性)であり、(19世紀の画家マネに始まり20世紀につながる)モダニズムの絵画がその特性を純化する方向に向かった、というわけです。(99ページ)

遠近法とは何か?

英語ではパースペクティブといいますが、日本語ではなぜか、「遠」と「近」という、対立する意味の二つの文字によります。その両方を含んだのが遠近法です。・・・私たちが日常においても、あるいは世界のありようを思索するようなときでも、近くだけ(身近な世界)に関心を持つのではなく、また「ここでもない、どこか」のはるかな遠い世界を思索する(現実離れした)のでもなく、両方をともに見て認識する、そういう幅広いスタンスが、遠近法という用語にはあるのです。(166ページ)

西洋絵画は遠近法がある時とない時代が繰り返す

西洋美術の歴史の中で遠近法が絵画に大きな影響を与えた時代が2回あったというのだ。その一つが、古代ギリシャの末期ヘレニズム時代とそれに続く古代ローマ時代(ヘレニズム―ローマ期)で、そしてもうひとつがルネッサンス時代。西洋美術は、この二つの時代をピークとして遠近法にどっぷりと浸かり、また別の時代には遠近法から離れた。(141ページ)

 

遠近法のない世界

遠近法を使っていない中世の絵画は、美術として劣ったものではなく、遠近法による現実感を消すことで、神の世界をうかがわせるような神聖な効果が生じる、ということになる。(155ページ)

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遠近法がわかれば絵画がわかる

絵画の技法としての遠近法には4つの種類があるという。「重なり」、「陰影」、「色彩」、そして「縮小」である。何も重ならずに見えるモノと重なって見えるモノでは順位が生まれる。陰影が付くことで奥行が生まれる。我々は(近)白→赤→黄→緑→青→黒(遠)の順番で色に遠近感を感じるという。そして一般的に言われる遠近法が遠くのモノを小さく描き、近くのモノを大きく描くことである。

本書ではセザンヌの「キューピッドの石膏像のある静物」を例に、一枚の絵の中に4つの遠近法が取り入れられていることを解説する。セザンヌによって「伝統の自然的秩序と単一固定視点にもとづく伝統的な遠近法を裁断し、複数の流動する視点からの眼差しと透明感溢れる色面で対象を再構築」される。(175ページ)西洋絵画がルネッサンス以降突き詰めていった遠近法はセザンヌ以降平面性へとシフトを始めるのである。その背景には写真の誕生の影響があるのは当然であるが、単純に平面性を追求したのではなく、遠近法を使わずに3次元を表現しようとしたことになる。

平面性の中世宗教絵画、遠近法を使ったルネッサンス以降の絵画、再び平面性に回帰を始めたモダニズムの絵画、そこには一直線の変化ではなく、螺旋状の変化がある。

蛇足

日本絵画に陰影が無いのは、水彩絵具では陰影が描き切れなかったから

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