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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

偶然何かを見出すとき、愉しい~『ヒトはなぜ絵を描くのか――芸術認知科学への招待』齎藤亜矢氏(2014)

ヒトはなぜ絵を描くのか――芸術認知科学への招待 (岩波科学ライブラリー)

 齎藤氏は芸術認知科学の研究家、キーワードは「想像」と「創造」。旧石器時代の洞窟壁画を出発点に、脳の機能や言語の獲得など、進化と発達の視点から考察する。(2014)

 

なぜ描くのか

なぜ描くのか、と聞かれたら、わたしなら、描くことが面白いからだと答える。・・・描くことをおもしろく感じさせるのもまた、ヒトが進化してきた認知的な特性ではないか。(73ページ)

 ヒトの場合、表象を描こうとする欲求が強く、まだ自力では表象を描けない運動調整能力が未熟なうちから、「ない」ものを補って表象を完成させようとする。それは、いわば発見のおもしろさであり、「ない」モノを生み出すおもしろさだろう。(79ページ)

子どものなぐり描き

小さな子が、なぐり描きをしたあとで、その不定形な線に名づける場合もある。・・・描きながらふと手を止めて、「これ、鳥みたい」といって、さらに目や足を描き加えることもある。絵筆を動かすと、紙面上の線が変化し、その上に次々とイメージが想起される。しかも、そこに少し手を加えれば、頭の中に想起されたイメージを目に見える形で「外化」できるのだ。(80ページ)

アーティストもまた

アーティストやデザイナー、アニメーション作家、建築家など、クリエーターの制作過程では、アイデアスケッチから始める人も少なくない。先に頭でアイデアを練ってそれを紙の上に表現するのではなく、自由に見たモノをスケッチしたり、落書きのようにイラストを描いてみたりして、とりあえず手を動かしながらアイデアを形にしていく。半分は偶然性に身をゆだね、自分が描いた線や形からまたインスピレーションを受けるということだろう。(102ページ)

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ヒトはなぜ絵を描くのか

齎藤氏はスペインアルタミラ洞窟(1万8千年前)などを見学する。天井画のバイソンが、岩の膨らみや亀裂を利用して描かれていたという。1万8千年前、岩の膨らみや亀裂にバイソンのイメージを想起し、人はそこに足りないものを描いて創造したと解釈する。齎藤氏によればヒトは補わずにはいられないという。

文字を持たなない文明はあっても、絵を描かない文明は存在しない。ヒトは楽しいから描き、それを外部化し他者と共有することで更に楽しくなる。ヒトは絵を描くという偶然性の中に様々なイメージを見出し、それに更に手を加えてイメージを明確化した。最初から明確なイメージがあったのではなく、手を動かして生まれたのである。

ある人は絵を描き、ある人は音楽を奏で、ある人はビジネスを始める。人は偶然性の中に何かを見つけ出さずにはいられない存在なのである。

蛇足

偶然何かかを見出すから愉しい

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