毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

中央銀行とは何の為の組織なのか?~『ルワンダ中央銀行総裁日記』 服部正也(増補版2009)

ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書)

 服部正也は日本銀行出身、一九六五年、経済的に繁栄する日本からアフリカ中央の一小国ルワンダ中央銀行総裁として着任した著者を待つものは、財政と国際収支の恒常的赤字であった―。本書は物理的条件の不利に屈せず、様々の驚きや発見の連続のなかで、あくまで民情に即した経済改革を遂行した日本人総裁の記録である。(増補版2009)

ルワンダのことはルワンダに聞け

アフリカの経験のない私が経済再建計画を立案する場合、ルワンダルワンダ人との理解への努力の必要がことのほか痛感されたのである。・・・事実を知る方法は人の話を聞くことに頼らざるをえなかった。私はつとめて人に会った。銀行に用件でくる人からも、できるだけその人のルワンダに関する知識を吸収するように心がけたが、それだけでは不十分であるので、こちらかもでかけて話も聞いた。(位置1693)

ルワンダの経済状況

ルワンダの経済事情は悪化するばかりで、外貨も急速に減り、平価切下げ以外の途はない事態になってきた。またルワンダルワンダ人を理解するにつれ、国民の大多数を占める小農の個別的自発的努力を動員することが経済再建の基本であると確信するに至ったのである。(位置1801)

国の生産から生まれる利潤が殆ど外国人の手に入り、それが軽く課税されて海外に送金されるのでは、生産があがっても税収は増加せず、国はますます貧乏になるのである。(位置1805)

6年間の任期を終え、引き留めに会うも帰任

私としてはこの組織するという仕事が終ったら、私は身を引くべきで、出来上った組織の運営はルワンダ人に任せるべきであると考えていた。(位置3858)

服部氏のまとめ

私は戦に勝つのは兵の強さであり、戦に負けるのは将の弱さであると固く信じている。…どんなに役人が非能率でも、どんなに外国人顧問が無能でも、国民に働きさえあれば必ず発展できると信じ、その前提でルワンダ人農民とルワンダ人商人の自発的努力を動員することを中心に経済再建計画をたてて、これを実行したのである。(位置3953)

中央銀行とは何か?

 

豊かになるのはあくまで国民の努力である。中央銀行とは、国民が豊かになるために、必要な資金が必要な所に投資される様になることをサポートすることである。一方中央銀行がその役目を忘れて特定集団の利益を図るとき、国民に大きな災いをもたらす。

服部氏は自分のミッションとはルワンダ中央銀行の組織化である、と言う。組織化とは組織の目的を明確にし、目的に沿った行動が行われるようにすることである。中央銀行を含む統治機構が国民の富を増進させる、という目的を忘れた時、どうなるか?国の生産から生まれる利潤が殆ど特定の集団に渡り、再投資されなくなったらどうなるのか?服部氏は6年間の在任期間において中央銀行の、そしてルワンダ経済再生プランを作り、中央銀行と政府の組織化=目的の明確化を行っていた。

60年前にルワンダに学ぶ

 

我々は60年前のルワンダを“上から目線”で見ていいのであろうか?今の日本にルワンダと共通する所はないか?60年前のルワンダは、日常に埋没して気づかない、今の日本の状況を浮き彫りにしてくれている。

蛇足

 

組織とは目的を果たすこと。

こちらもどうぞ

 

kocho-3.hatenablog.com

 

 

kocho-3.hatenablog.com