毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

どうしてソ連が崩壊したのか?これから気づくのは今や貧困と失業は別である、ということ~『ソビエト帝国の復活―日本が握るロシアの運命』小室直樹氏(1991)

ソビエト帝国の復活―日本が握るロシアの運命 (カッパ・ブックス)

 ソ連は1980年までは経済成長を続けていた、ではどうして崩壊したのか?

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toshi_tomieのブログ : ソ連崩壊の真相(2) 非効率な経済が原油をがぶのみして油田が枯渇したためーーゴルバチョフ改革が間に合わず

 

1960年代ソ連は輝いていた

 

1961年4月12日、ユリ・ガガーリンは、宇宙への一番乗りを果たした。ソ連は先進国アメリカに、追いつき、追い越したのである。・・・1970年までに、アメリカに追いつき追い越す。そのようにフルシチョフが豪語しただけではない。それは共産党綱領にも盛られた。1961年の第22回共産党大会で採択された党綱領には、「1970年までに工業生産でアメリカに追いつき追い越し」「1980年までに共産主義社会に到達する」とある。宇宙一番乗りを果たした1961年のソ連人に、未来は黄金色に輝いてみえた。(66ページ)

1970年代ソ連は成長を続ける

1964年、(フルシチョフに続く)ブレジネフ時代は、やはり楽天主義をもって始まった。ソビエト経済は成長を続けており、人々の生活も確実に上昇しつつあった。18年にわたるブレジネフ時代の、はじめの10年近くは、希望の星は、見え隠れしつつもまだ輝いていた。・・・ソ連は、鉄鋼生産額、石油産出額、、、など、多くの部門で、アメリカを追い抜いて世界一となった。(78ページ)

1956年の国家年金法で、すべての人の老後は保証された。…1967年、ロシア革命後はじめて週5日労働制が導入された。すべての労働者は、土、日は有給で休めるようになったのあった。先進資本主義諸国に先駆けて。(193ページ)

貧乏はマルクス教の宿命である

社会主義に失業はあるか。貧困はあるか。マルクスは、それについて一言も語っていない。それであればこそ、貧困にのたうちまわっている人々は、社会主義に貧困はないと思い込んでしまった。巷にあふれる失業者の大群を目にして、(ブルジョア)経済学の大家は、失業者とは本来存在すべからざる者であるとうそぶく。マルクスは、資本主義において失業者の発生は必至であると説く。それゆえ、マルキストは、当然社会主義に失業はありえないと信じ込んでしまう。論理の飛躍なんかなんのその。論理的必然ではないが、宗教学的に言って、心理的必然なのである。(177ページ)

ソ連の悪循環が始まる

1962年といえば、黄金の60年代のはじまり。その頃からソ連人の生活水準の向上、賃金上昇は目覚ましい。この賃金上昇、生活水準の向上こそが、社会主義の天国を地獄に変化せしめる原因となった。社会主義のメリットが桎梏(あしかせてかせ)となる契機となった。(195ページ)

1956年にパンの価格を固定して、その後34年も据え置いたまま、主要畜産物の価格も、62年に固定して据え置いたまま。(その後賃金上昇は)たえまなく進んでいく。・・・ついに1987年。政府の助成金は、食料品などの生活必需品に対する助成金だけで軍事費を上回るまでに達した。(200ページ)

セイの法則に関する積み重なった論議こそが、大切な「資本主義の遺産」として、社会主義は、継承すべきではなかったのか。…作ったモノは必ず売れるのか。・・・「セイの法則」=「供給は需要を作る」が成立しない以上、それは(マルキシズムイデオロギー的死は)誠に当然のことだ、と理論づけた。(221ページ)

ソ連が黄金色に輝き、そして輝きを失速したのはなぜか?

 

私はソ連が崩壊した原因は多大な軍事費と共産主義が労働意欲を維持し得ないからだ、と考えていた。

ソ連は少なくとも1980年頃までは成長を続けていた。第二次世界大戦戦勝国としてソ連邦が成立、東欧圏を吸収し科学・産業技術を手に入れた。更に原油産出により外貨獲得にも成功した。これらを使った計画経済型のキャッチアップが成功しソ連型の豊かな社会を実現していた。

一点して1980年以降のソ連は、発展途上部分の解消にも関わらず、賃上げによるコストアップが続き、やがて1987年には軍事費を上回る財政赤字となる。

マルクスは資本主義下の貧困と失業の発生を理論化したのであって、マルキシズムによって貧困と失業が無くなるとは言っていない。「貧困と失業を無くす」という教義に基づいて経済が運営された。失業とは何か?労働が経済価値を生まないことである。セイの法則が成立するのであれば労働もまた必ず売れる=雇用される、ことである。資本主義はセイの法則が成立しないことを失業者の存在によって身をもって証明していた。マルキシズムは資本主義の負の成果を活かさなかったことに気づく。

仮にソ連が成長の対価を賃上げではなく、時間短縮によって配分したらどうなっていたであろうか?結局経済成長するということは、社会維持に必要な労働力が減少することであり、それは資本主義も社会主義も一緒だと気づく。

人類は農業生産性向上によって理論的には飢餓を克服している。本質的には貧困の存在しない今、「失業とは働かなくても食べていけること」に代わっていることに気づくべきである。

蛇足

貧困と失業は別のものである

蛇足の蛇足

マルクス主義も資本主義も宗教現象

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