毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

人間とチンパンジー、DNA1.6%の差は何を意味するか?~『若い読者のための第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来』J・ダイヤモンド氏(2015)

若い読者のための第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来

 ダイヤモンド氏は進化生物学者、チンパンジー(コモンチンパンジー)、ボノボ(ピグミーチンパンジー)と人間の遺伝子はじつに「98.4%」が同じ。人間は「第三のチンパンジー」。

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現生人類誕生は10万年以上前

解剖学的に現生人類と同じ人たちがここに出現したのは、10万年以上も前のことで、はじめのころは彼らもネアンデルタール人と同じような道具を作り、ネアンデルタール人より決して優れていたという訳ではなかった。しかし、6万年前ごろまでのことになるが、行動面においてなにか魔法のひとひねりのようなものが生じた結果、その体に現代的な構造が加わる。このひとひねりによって革新の才が授けられ、完全に現代的な人類が生み出されたのだ。(59ページ)

大躍進は言葉によって生まれた

大躍進を引き起こした要因は、これという正解がまだない考古学上の謎だ、不明とされる要因は骨の化石に残るようなものではない。…この疑問を考えてきたほかの科学者と同じく、私にも正しい答えはたった一つしか思いつかない。言葉である。解剖学的あるいは身体的な変化によって、複雑な話ことばを操ることが可能になったのである。

その答えはどうやら、繊細な発生をコントロールしている咽頭(声帯がある)、舌、もろもろの筋肉の構造にあるようだ。人間が言葉を話す能力とは、たくさんの構成要素と筋肉が正しく機能しているおかげなのである。類人猿のように、限られた子音と母音しか出せなければ、人間の語とは、人類の声道に生じた何らかの変化―さらにきめ細かく音声をコントロールでき、もっと幅広い発生を可能にした変化だと考えられるのだ。(62ページ)

大躍進後

大躍進が起きたあとでは、文化の発達はもう遺伝子の変化に捕らわれたものでなくなっていた。…過去6万年のあいだ、私たちの身体には変化らしい変化はほとんど生じていないが、それにもかかわらず、大躍進以降の人類の文化が遂げてきた変化は、数百万年のあいだに起きた変化をはるかにしのぐものだった。(63ページ)

第三のチンパンジー

 

ヒトは約700万年前にチンパンジーの系統から枝分かれした。その後、400万年前に直立歩行を獲得し、ホモサピエンスとして確立するのが50万年前、現生人類の誕生が10万年前、といった系統図を歩んできた。我々人類は生物として10万年の寿命を持っていることになる。

チンパンジー(ボノボとコモンチンパンジー)は最近の学術調査によれば、シンボリック・ミュニュケーションを行うことが可能であるという。何かを表象する言葉を使っていることになる。本書の著者ダイヤモンド氏によれば、人類は6万年前に複雑な音を操作できる声道を獲得した。これが人類の大躍進の契機となり、現在に至る。

我々が生物学的に人類となって10万年、言葉を身に着けて6万年、地球の歴史から見ればごく最近の事である。少なくとも6万年前には現生人類以外に、ネアンデルタール人と謎のアジア人(2004年インドネシア・フローレンス島で化石が発見された、小人。)が存在していた。

言葉をしゃべらない人が共生していることを想像できるであろうか?人間とチンパンジーの境界線は低い。

蛇足

  現生人類の歴史は短い。

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