毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

あなたは解のある問題に挑戦していますか?~『数学を使わない数学の講義』小室直樹氏(2005)

数学を使わない数学の講義

 

小室直樹氏は社会学者、数学を使った論理的思考とは?(2005)

 

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太平洋は存在する

バルボアなる男が、パナマ地峡で太平洋を(1513年に)発見してしまうのだ。つまり太平洋が紛れもなく存在することがもうわかってしまった。そして、その大洋を、どんどん、どんどん西へ向かって行くなら中国があるだろうということも、まず確実に予測された。ところが、肝心要の、大西洋から太平洋に行くための海峡があるかどうかが、まるでわからなかった。

それで、およそ10年もの間、ものすごく熾烈な海峡探しの競争が起こる。ある人は北氷洋で難破し、ある人はインディアンの殺され、またある人は、ラプラタ川(アルゼンチンとウルグアイの間を流れる大河。全長約360㎞)、河口の幅は220キロに達する)を遡って、これが大西洋から太平洋に行く海峡だろうと信じ、公開を続けたりもする。(34ページ)

マゼランは太平洋への海が存在すると言い切った

「私は海峡のあり場所を絶対に知っている」と言ったのが、マゼランである。もちろん、これは確信にみちたハッタリで、知っているはずなどなかったわけだが、それに運命をかけた。もし、マゼランがそう断言しなかったら、乗組員たちは「本当に海峡があるのだろうか」という疑心暗鬼に襲われて、「ヤーメタ」ということになっていたかもしれない。そしてその結果ついにはマゼラン海峡を発見したわけである。しかし、当時の探検家にとって、最大の問題は何であったかといえば、大西洋から太平洋へ行く海峡が本当にあるかどうかということ、つまり存在問題であったのだ。・・・・マゼランの場合には、ハッタリをかまして、海峡があるとは言ってみたものの、本当にあるかどうかは、まるでわからなかった。だからこそマゼランはあれほどまでに苦労をしたわけだ。何もわかっていない当時としては、もしかすると、アメリカ大陸が北極から南極まで、ダッーとつながっていることだった考えられる。(36ページ)

太平洋はいつ見つかったのか?

 

マゼランが、1520~1521年に、世界一周の航海の途上でマゼラン海峡を抜けて太平洋に入った時に、荒れ狂う大西洋と比べたその穏やかさに、"El Mare Pacificum" (平和な海)と表現したことに由来する。

中国に至る海の存在は1513年、パナマ地峡によって発見される。太平洋の存在が確認されると、次は太平洋に至る海のルートの存在が問題となる。マゼラン海峡の発見によって、中国を経由して世界を1周するルートが確認された。その時海は太平洋となった。

解の存在自体が不確定な段階から、解の存在が確実になると一気に解決に至る。我々が挑戦しようとするとき、まず考えるべきは解が存在するか否か、である。解が存在しないとき、もっと言えば意味のある解が存在しないとき、それに挑戦する意味もまたなくなる。

蛇足

 あなたの挑戦には意味のある解が存在しますか?

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