毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ガンダムをめざす覚悟はありますか?~『声優魂』大塚明夫氏(2015)

声優魂 (星海社新書)

 

大塚氏は声優、「みんながこれをやらないから、私に仕事が来る」

声優界に並び称される者のない唯一無二の存在、大塚明夫。稀代の名声優がおくる、声優志望者と、全ての職業人に向けた仕事・人生・演技論であり、生存戦略指南書。 (2015)

 

 

 

声優になるのに専門学校は必要ではない

「声優として売れるには色んな入り口や方法があります、専門学校に入らなきゃいけないなんて決まりはありません。学校に何年も通う時間があるのならむしろ、うちの事務所の門を直接叩いて『ボイスサンプルを聞いてください』って言えばいいじゃないですか。…」

(声優のマネジメント会社の社長が専門学校の講師として)この話をするようになってから5年。実際に事務所に連絡をしてきた生徒はまだ一人もいないそうです。

「声優になりたくばまずは声優専門学校へ」。…これはただの思い込みです。

なぜ多くの声優志望者が頑固に「声優になりたければ、まずは声優専門学校に2年通うのだ」と思いこんでいるのかといえば、「より安全で確実な道はある」と思いたい方がそれだけ多いからだと思います。…「安全策」として学校という道を選ぶ人は、その時点である種の“ステレオタイプ”を選んでいるということ、そしてこと芸能界において“ステレオタイプ”ほどすぐさま使い捨てられる存在はないということをはっきり認識しておいてください。

ガンダムになる覚悟があるのか?

ガンダムを1機作るより、量産型ザクをたくさん揃える方が安上がりだし手間もいらない。しかしザクでは世界は変わらない、皮肉なものです。…声優を選ぶ側が望んでいるのは実は“ステレオタイプでない”役者なのです。一万人いる声優の中で少しでも抜きんでた、はみ出した何かを持つ人間。とりあえず基本だけは押さえられる、という人をザクとして使うことはあっても、ガンダムとしては重宝してくれません。(143ページ)

みんながこれをやらない

 

我々の仕事は「声づくり」ではありません。「役作り」です。(97ページ)

基礎稽古はいつになっても重要なのですが、言ってもやらない。重要ではないと思ってしまうのでしょう。地味ですし、いつ花開くかわからない作業ですから。(123ページ)

若い声優たちと接していると、彼らが本当に役者としてキャラクターを演じたいと思っているのかどうか、やくわからなくなることがあります。…若手は皆もっと「主役をやりたい」「大きい役がやりたい」と望むべきだと思っています。(132ページ)

うちの事務所のマネージャーたちはよく新人に「先輩に現場に連れていってもらいな」とすすめるのですが、実際そうやって現場にくっついてくる新人はほとんどいないようです。(133ページ)

例えばテスト(本番前の確認)でうんと自己主張してみる。…駄目だとわかっていてもとにかく自己主張してみる、ということを何度もやりました。…これは私たちに許された最高の、そして最低限の自己主張なのです。挑んでいない人は、絶対に目にとまらないからです。(152ページ)

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「『何が自分にとって幸せで楽しいのか』を明確にしておけ」~声優・大塚明夫インタビュー~ (1/2)

声優魂

声優と名乗る人、志望している人は1万人いるという。声優業界の中で用意された席は300人分。これをベテランから新人まで競争している。大塚氏は声優志望者に「声優だけはやめておけ」という。それは競争が厳しいからではなく、そもそも声優というものが何かを認識していない、ことにあるという。

声優とは「私たちの仕事は、そのキャラクターの役割とパーソナリティを表現し得る最適な芝居をすることです。(97ページ)」

300席に入るためにどうしたらいいか?声優学校に入らず、大物声優の付き人をやり、基礎練習を怠らず、主役を目指す。要は1万人の中で違ったことをする覚悟を持つかである。

本書で大塚氏は業界事情を無視し、本音を語っている。大塚氏のメッセージは「(その他大勢の)ザクをめざすな、(主役の)ガンダムをめざせ」というものである。

蛇足

 あなたはガンダムをめざす覚悟がありますか?

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