毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

地球収縮説を知っていますか?~『大陸と海洋の起源』ヴェーゲナー(1929、文庫は1981)

大陸と海洋の起源〈上〉―大陸移動説 (岩波文庫)

 ドイツの地球物理学者ヴェーゲナー(1880‐1930)が今世紀はじめ本書で提唱した大陸移動説は、それまでの地球観をくつがえす、まさに地球科学の1つの革命であった。(原著は1929、文庫は1981)

 

 

大陸移動

大陸塊は比較的軽いシアル(シリコンに富む岩石群)からできていて、それがもっと

重く、流動性を持つシマ(玄武岩を主体とするような塩基性岩石群)の層の上に浮かんでいる。シマは大陸塊の下にもあるが、大陸塊と大陸塊の間の深海底にも露出している。大陸塊はそのシマに対して移動するが、その移動の方向や速さがさまざまであるために、大陸塊と大陸塊との間の相対的な位置が変化する。この相対的位置の変化が大陸移動である。(解説204ページ)

それ以前は地球収縮説

この説は、19世紀の後半から20世紀の前半にかけて、地質学の最も基本的な原理(あるいはパラダイム)になり、これに基づいてあらゆる地質現象が説明された。その説によれば、地球が冷却するにつれて、その内部が収縮するので、地球の表面の或る地域は落ち込んで海洋になったが、落ち込まない地域もあった。海水は落ち込んで深くなった海洋に集まったので、落ち込まなかった地域は海面上に現れて大陸となった。さらに、地球の内部の収縮のために、その表面にある地殻のなかに横圧力を生じ、その結果として褶曲山脈ができた。したがって、大陸と海洋とは高さが違うだけであって、物質や構造の上では本質的な違いはないし、陸塊が横に移動することはできない。本質的な移動はいつでも下向き(収縮による沈降)であると考えられた。(解説208ページ)

ヴェゲナーの発想は非常識

当時の世界の地質学者や地球物理学者の圧倒的多数は、大陸移動説をまるで受け付けなかった。大陸と深海底が根本的に性質のちがうものであり、大陸塊は深海底の物質(シマ)の層の上に浮かんで横に動くというヴェゲナーの所説は、当時の常識から外れすぎていたので、人びとはヴェゲナーの論拠をまじめに聞こうとはしなかった。(解説212ページ)

ヴェゲナーの着想は地質学と古生物学の融合

大陸移動という観念を私がはじめて思いついたのは、1910年のことであった。それは世界地図を見て、大西洋の両岸の海岸線の凹凸がよく合致するのに気が付いた時である。はじめ私はこの観念に注意しなかった。なぜなら、それは本当とは思えなかったからである。1911年の秋になって、全く偶然にある総合報告を読んで、昔ブラジルとアフリカとの間に陸地のつながりがあったことを示す古生物学上の証拠を初めて知るようになった。(15ページ)

非常識な発想をどうして思いついたか?

f:id:kocho-3:20151009075951p:plain古生物の分布大陸 - Wikipedia

 

大陸移動説の前のパラダイムは地球収縮説である。地球が冷えて固まる間に収縮して高度が下がり、そこが海底になったと考える。一見筋が通っている。地球収縮説と古生物のデータを組み合わせると、ブラジルとアフリカの間は昔高度が高く大陸だったのものが沈下して大西洋!ができたことになる。

大陸移動説を知る現在の我々には俄かに信じがたいが、わずか60年前まで受け入れていたのである。

地球収縮説が縦方向の移動に対し、大陸移動説は横方法の移動であり発想が根本的に違う。ヴェゲナーは地質学と古生物学の知見を結び付け、縦方向の移動という制約を排除したとき、大陸移動説は誕生した。

蛇足

 

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