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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

なぜ恐竜絶滅論争に決着が付くのに時間がかかったか?~『決着! 恐竜絶滅論争』後藤和久氏(2010)

生物

決着! 恐竜絶滅論争 (岩波科学ライブラリー)

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 後藤氏は地質学の研究家、恐竜はなぜ絶滅したのか。専門家にとってはもはや決着済みといえる絶滅の原因をめぐって、いまだに新説が出されてはマスコミを賑わす。これを憂えた著者らは、有名な科学雑誌に論争の余地なしとする決定的な論文を投稿。(2010)

1980年小惑星説の登場

(物理学者と地質学者の)アルヴァレズたち(親子)の論文の大部分は、彼らが衝突説の証拠としたイリジウムという元素の濃度が、K/Pg境界(白亜紀-第三紀境界)で異常に高い値を示すことの報告に費やされています。イリジウムは、地球外から飛来する隕石などには含まれていますが、地球の表面にはほとんど存在しません。だから、小惑星が地球に衝突した証拠になるとアルヴァレズたちは考えました。彼らが提案した大量絶滅のシナリオは、直径10(±4)キロメートルの小惑星が地球に衝突することで大量のダスト(塵)が放出され、太陽光を数年間にわたって遮断して寒冷化し、光合成の活動が止まり、大型草食、肉食動物の連鎖的な絶滅に繋がったというものでした。(29ページ)

1991年にメキシコ・ユカタン半島でチチェルブ・クレーターが発見されてからは、衝突説は広く認められ定説となりました。(7ページ)

絶滅しなかった動物たち

私たちの祖先である哺乳類や、ワニ・カメなどの爬虫類、両生類の一部は絶滅を免れています。・・・光合成生物を基底とする食物連鎖以外にも、落ち葉や腐食した木や菌類、昆虫、生物の死骸などを食べる生物がいます。このタイプの生物は、腐連連鎖という別の系統に属する生物です。当時の肉食の哺乳類の多くは、昆虫や地中動物などを食べていたため。植物には直接的には依存していなかったと考えられています。つまり腐食連鎖に属していただけです。K/Pg境界の大量絶滅では、光合成を行う植物を基底とする食物連鎖上にいた生物に被害が集中しており、哺乳類のように、100%の絶滅には至らなかった生物の多くは、腐食連鎖の中にいたという、大変重要な特徴があります。(24ページ)

 

2010年恐竜絶滅論争に決着

今回の論文の注目すべき点は,地質学,古生物学,地球物理学,惑星科学など,学際化・細分化していた衝突と生物大量絶滅に関する研究を,各分野の専門家が集まり統一的に検討した結果,チチュルブ衝突により生物大量絶滅が起きたことをあらゆる証拠が示唆するという結論に達した点です.長年にわたる科学論争を決着させるために,このような研究手法が取られたという点で,本論文は科学史的にも重要です.そして,アルヴァレズ博士らの発見から30 周年という記念すべき年に,白亜紀末の生物大量絶滅の原因をめぐる論争は本研究により決着を迎えたといえます.白亜紀末の生物大量絶滅原因をめぐる論争,地球外天体... | 受賞・成果等 | 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-

東北大学プレスリリースより)

自説を訂正することは難しい

1980年アルヴァレズ博士らにより小惑星説が唱えられ、1991年メキシコ・ユカタン半島でチチェルブ・クレーターの発見によって定説となった。本書では絶滅しなかった生物について簡素な記述がある。この説明は、各分野の専門家が小惑星説をどのように受容してきたかを理解できる。

一方この説に反対する研究者たちは2010年に至っても小惑星説を受け入れなかった。科学議論は一見合理的に見えて、感情の渦巻く、泥臭い側面のあることを知る。この論争も進化論を巡る論争と同じであると気付く。過去に起こったことを100%断言はできない。宗教的に受け入れにくい点がある。なぜなら小惑星に原因を求めることは、因果関係が地球だけでは閉じていないことになる。

我々は間違ったと気付いても、自説は訂正し難いのかもしれない。

蛇足

 

小惑星説は人間の推論から始まり、データが裏付けた。

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