毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

もしあなたが5万年前の地球に生まれていたら・・・~『人類がたどってきた道―“文化の多様化”の起源を探る 』海部陽介氏(2005)

人類がたどってきた道―“文化の多様化”の起源を探る (NHKブックス)

海部氏は 生物人類学の研究家、人間の創造性の根源を解き明かす。文明を築き、ロボットや宇宙旅行までも可能にする私たちの創造性。この能力ゆえに私たちの文化は発展し、多様化した。(2005)

 

f:id:kocho-3:20150906145233p:plain人間の創造性の起源を解き明かす新発見

 

 

7万5000年前の南アフリカ

ブロンボス洞窟は、南アフリカケープタウンから300キロメートルほどの東の地点、インド洋の荒波が押し寄せる海岸に面した崖に開口している。・・・ブロンボス洞窟の7万5000年前の地層から赤色オーかー(ベンガラ)の塊が8000点以上出土し、その中の二つに、明らかに人が刻んだ幾何学模様が発見されたというのである。オーカーは自然界に存在っする代表的な顔料で、先史時代から世界各地で絵の具や顔料として利用されている。模様は、斜めの格子パターンが連続しているもので、どうやら石器で刻まれたらしい。(62ページ)

遺物はシンボル操作のため

遺跡で見つかる絵、抽象模様、彫刻、個人がつけるアクセサリーといった遺物を、シンボルを用いる行動が存在した証拠とみなしている。こうしたものにはたいていの場合、見る人への何らかのメッセージが込められているからだ。・・・これらによって、他社へ伝えることのできる情報量が飛躍的に増すからだ。個人の記憶や概念をシンボルに置き換え、個人の脳の外に出すことにより、これを保存し、仲間で共有し、次世代に伝えていくことができる。シンボルを用いて知識を伝達すれば、現場での直接体験がなくても、多くのことを学べるようになる。(67ページ)

知の遺産仮説

アフリカ大陸南端にある小さな洞窟の中に、7万5000年間埋もれていたこの模様は、私たちの遠い祖先が文化を大きく発展させていく能力をすでに進化させていたことを示唆している。・・・つまり現代人は、その内面において・・・世界へ拡散しはじめた5万年前の祖先とはほんと同一だとういうことなのだ。過去5万年間に私たちの内面が全く進化しなかったかと言えば、そうでなかったかもしれない。しかしそうだとしても、その程度はごくわずかで、本質的なものではなかったろう。・・・現代の高度な産業技術や複雑な政治経済詩システムは、旧石器時代の技術や社会と比べると全く異質に見えるが、後者から前者への移行は、おそらく知能の進化ではなく、基本的に過去5万年間の知識と経験の蓄積の末に実現されたものなのだ。(317ページ)

文化の多様性

各地へ散った祖先たちの集団は、それぞれの土地の環境に見合った文化を発展させていっった。過去5万年間の祖先たちの歴史を見れば、そうであったことがわかる。そしてこの歴史観に立ったとき、そうして成立した多様な文化に、序列をつけるためのまっとうな尺度など存在しないことが理解されるだろう。(320ページ)

5万年前人類はどうして世界に拡散できたか?

 

人類は5万年間にアフリカを出て、ヨーロッパ、アジア、南北アメリカに拡散していった。気候を始め環境は異なる。人類は身体を変化させるのではなく、知能と文化で対応した。著者は、5万年前の人類と現在の我々は同じ能力であると主張する。そしてまた5万年前に肉体的に何らかの変化をしたのではないと言う。

違うのは現在の我々が5万年間の文化の蓄積を利用できる。それに対して5万年前の人類は文化の蓄積が小さかっただけである、という結論になる。

7万5000年前のオーカーを作った人と我々は同じ仲間である。

蛇足

 

我々は人類の文化に何か付け加えているか?

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