毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ヨーロッパは大陸か、ユーラシア大陸に接続する半島なのか?~『子どもたちに語るヨーロッパ史』ジャック・ル・ゴフ氏(2009)

f:id:kocho-3:20150903082701p:plain

子どもたちに語るヨーロッパ史 (ちくま学芸文庫)

ゴフ氏は現代フランスを代表する歴史家、「統一ヨーロッパ」の建設という夢を前提に、フランスの中学生に向けてヨーロッパの歴史を語る。(原書は2007年、文庫は2009)

 

ヨーロッパ大陸

 

ヨーロッパ大陸を旅すると、その第一の特徴を体験するでしょう。それは世界の大陸のなかで一番小さいということです。・・・あきらかのいヨーロッパはほかより小さいのです。数字を挙げるなら、ヨーロッパの面積は1000万平方キロメートルで、地表の7%を占めるに過ぎず、一方、アジア大陸は30%、アメリカ大陸は28%、アフリカ大陸は20%をしめています。(32ページ)

ヨーロッパの東の端はどこか?

東はどこまでのヨーロッパなのか、地理も歴史も明らかにしていません。・・・イスタンブールはトルコ全体のごく一部分ですが、最大の都市であり、地理的にはヨーロッパに属します。トルコはアジアという大きな付録のついたヨーロッパの国なのでしょうか、それともヨーロッパという小さな付録のついたアジアの国なのでしょうか。(35ページ)

ヨーロッパの基盤は何だったか?

(中世に)じょじょにすべての(ゲルマン民族などの)「異民族」はキリスト教に改宗しました。中世ヨーロッパにおいてローマ教会への改宗は、その民族が一つの国になり、文明化されたことのしるしでした。それは今日でいえば、国際連合を加盟するようなものです。(56ページ)

ヨーロッパにとってEUとは何か?

 

人口、経済力、文化的影響力についてEUの大きな目的のひとつは、他の世界規模の集合体とつりあいをとることです、21世紀、人類はいわゆるグローバリズムのよって、世界中で強者の支配を受ける状態にあります。・・・おそらく、統一されたヨーロッパの優先目標は、共通のエネルギー政策や環境保護と並んで、共通経済政策の実現でしょう。・・・単一ユーロは一つの進歩です。中世において、通貨が多様で、たえず両替に頼っていたことが、ヨーロッパの経済発展にブレーキをかけました。(145ページ)

ヨーロッパはどうありたいか?

ヨーロッパは経済、金銭、ビジネス、物理的利益だけに支配されるべきではありません。文化と文明のヨーロッパであるべきです。それがいつの時代もヨーロッパの最善の切り札であり、いちばん尊い遺産なのです。・・・・よき美しきひとつのヨーロッパの実現は、みなさんの世界に託された大プロジェクトだと思います。(147ページ)

 

f:id:kocho-3:20150903082701p:plain

ヨーロッパは大陸か半島か?

 

地表の7%を占めるヨーロッパが第二次世界大戦までの世界をリードしてきた。そして今「ヨーロッパはもはや世界を支配していない」(134ページ)と認識している。

ヨーロッパをかつて統合していたのはキリスト教。その影響力が弱まった今日、統合の枠組みとしてEUが期待される。ヨーロッパに人々はEUによってヨーロッパを束ねないと、世界に埋没してしまうという危機感を持っていた。そして「よき美しき一つのヨーロッパ」というのが次世代に向けてのメッセージである。ここには我々の知らない歴史認識、空間認識がある。これを知るとギリシャ問題も違った様に見えてくる。

蛇足

 

ヨーロッパは大陸か半島か?

こちらもどうぞ

 

kocho-3.hatenablog.com