毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ハワイの"ムウムウ"の由来を知っていますか?~『文化人類学入門』祖父江 孝男(2004)

文化人類学入門 (中公新書 (560))

祖父江孝男(1926-2012)は文化人類学の研究家、本書 は2004年増補改訂版による。

 

文化人類学とは

 

 

文化人類学を一言で定義してみると、世界の様々な民族のもつ文化や社会について比較研究する学問だということになる。・・・(文化人類学の方法論は)何よりフィールドワークによって、それぞれの民族の文化・社会をできるだけ具体的、実証的にとらえて研究していくところに大きな特徴がある。(2ページ)

 

 

ムウムウの歴史

ポリネシアのハワイの場合には1820年に、アメリカからプロテスタントの宣教師たちがはじめて訪れたのだが、当時のハワイ住民は男女とも上半身にはなにもつけていなかったので、これに衣服を強制的に着せることを、まず手始めの仕事としたのだった。そこで男性に対しては洋服を着せることにしたのだが、女性に対しては、船に積んであっもってきてはった布地でワンピースを大量生産した。そかし、住民一人ひとりの体にあわせて裁断していたのでは手間がたいへんで追いつかない。そこで誰にでもあうよう、ブカブカのズンドウ型衣服を考案していっせいに配ったのが、ハワイのムウムウの起源であり、幸いにハワイの気候によくあったので、すっかり受け入れられることになった。(198ページ)

文化人類学では衣服とは何か?

身体を美しく飾って目立たせ、とくに性差を強調して異性にアピールするように努め、さらに身分を強調して集団のなかにおけるみずからの位置づけを誇示しようとしたところから衣類が生まれた、と主張するものである。(83ページ)

東西で観察されること

平常はほとんど完全な裸体生活を送っているような民族のあいだでも、若い男女が集まって行う舞踊の際は、わざわざ医療をつけるという実例があげられる。・・・文明国の場合にしても、女性は一方で胸部をおおうことに注意を払いながら、一方ではその乳房をできるだけ大きく見せて性を強調する。男性の場合にしても、夏のあいだは厚さを耐え忍びながら、その社会に確立された「美の基準」にうまく合うよう盛装するのであって、この際にも、異性を意識する気持ちが多かれ少なかれあるのは、否定できない。(83ページ)

f:id:kocho-3:20150812075456p:plainCarly Googles: October 2010

どうして服を着るのか?

 

文化人類学では衣服は身体の保温・保護の為、羞恥心の為などの説もあるが、「性と身分を強調するための装飾」という説が最も本質に近いと考えられている。

ムウムウがハワイで一般化した経緯は、文化というものが偶然や非合理的な要因によって形成されることがわかる。あのゆったりしたシルエットは大量生産の為のものであったとは知らなかった。一度社会で受け入れられるとそれが正装となる。ネクタイやスカートがどうしてこんなデザインなのか?と問うたとして、そこにはロジックは無いのかもしれない。

それでもなお、あるいはだからこそ、文化人類学が世界の文化をフィールドワークした結果として衣服を抽象化した「性と身分を強調するための装飾」という表現は説得力を持つ。

蛇足

 

あなたが買った衣料の目的は何ですか?

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