毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

オキシントンというホルモンを知っていますか?~『経済は「競争」では繁栄しない――信頼ホルモン「オキシトシン」が解き明かす愛と共感の神経経済学』ポール・J・ザック氏(2013)

経済は「競争」では繁栄しない――信頼ホルモン「オキシトシン」が解き明かす愛と共感の神経経済学

 ザック氏は神経経済学者、経済を繁栄へと導くものは「天然資源」でも「勤労意欲」でもなく「信頼」だった!神経経済学を世界で初めて提唱した俊英が、信頼で経済が回るメカニズムを解き明かす!(2013)

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オキシトシン

 オキシトシンには末梢組織で働くホルモンとしての作用、中枢神経での神経伝達物質としての作用がある。末梢組織では主に平滑筋の収縮に関与し、分娩時に子宮収縮させる。また乳腺の筋線維を収縮させて乳汁分泌を促すなどの働きを持つ。(Wiki)

HOME回路

オキシトシンは、自らが分泌させる二つの快楽神経化合物質セレトニンと、オキシトシンの受容体だ。オキシトシンは、自らが分泌させる二つの快楽神経化合物セレトニンとドーパミンとあいまって「Human Oxytoction Empathy(ヒトオキシトシン媒介共感)」回路、略して「HOME」回路を作動させる。どーパインは相手の感謝の笑みを見せるような「他人に優しい行動」を強化し、セロトニンは気分を昂揚させてくれる。このHOME回路があるからこそ、私たちは(少なくともたいていの場合)道徳的な行動を繰り返すのだ。(107ページ)

オキシトシンが自己と他者、信頼と不信、接近と回避のバランスを維持している。脳がオキシトシンを分泌すると、そのバランスが共感の方向に移り、私たちは資源を提供して他者を助ける。(130ページ)

その逆さま、テストステロン

テストステロンはオキシトシンに狙いを絞ってその取り組みを妨げ、思いやりや感受性を抑え込む効果を生む。一見、これは何の得にもならないように思える。だが、テストステロンは若い男性(狩人や戦士)を俊敏で強力にするだけでなく、その優しさを奪うことによって、家族を養ったり守ったりするたなら頭蓋骨を叩きつぶすことも辞さない人間に変える。優しさは望ましいことが多いが、喉から手がでるほどほしい食べ物のためにかわいらしい小動物を殺したり、自分の食べ物(あるいは子供)を奪おうとする侵入者を追い返したりするのが仕事のときには、優しさが過ぎるとろくなことにはならない。(132ページ)

経済は信頼である

寛容さと信頼は、平均年収とほぼ完璧に足並みをそろえて増えていく。例外もあるが、生き延びるのがやっとの収入レベルから離れる人が増えるにつれて、安心感が高まり、そのおかげで、人を信頼したり寛容になったりする余裕が生まれる。寛容な国はより革新的で、繁栄を持続させるのに必要な技術的刷新も生み出していることも調査からわかっている。(242ページ)

お母さんに告げられますか?

 

我々は信頼と寛容をもたらすオキシトシンと攻撃性をもたらすテストステロンという二つの物質によって行動が影響を受けている。絶対的貧困を脱した我々は他人への信頼と寛容をもっと重視すれば自ずとオキシントンの分泌が増え更に信頼と寛容が強化されるという。それがイノベーティブな成果=利益につながるのである。

信頼と寛容の逆さまに「反倫理的」というキーワードがある。著者は物事の判断基準として「やっていることをお母さんに堂々と告げられますか?」という例をしめす。ビジネスの基本は信頼です、この言い古された表現の中に、人間が生物として獲得したオキシトシンという物質の存在があった。オキシントンの存在を意識しない手はない。

蛇足

 

何の為に信頼と寛容があるか?、それは他者と「つながる」ためである。

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