毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

資本主義は世界をどうやって変えたか?1825年に始まる鉄道事業の歴史~『株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす』ジェレミー・シーゲル氏(2005)

株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす

 

シーゲル氏は金融論の研究者、投資家に本当の利益をもたらすのは、企業の急成長ではなく永続である。(2005)

 

 

アメリカの鉄道産業

1950年代半ば、傾きかけていた鉄道業界は、さらに二重の打撃に見舞われた。まず州際高速自動車道(インターステーツ・ハイウェイ)が完成した。トラック業界との競争が激化した上、乗客数が減少して、ペン・セントラル、リーディング、エリー・ラカウァナなど相次いで破綻に追い込まれた。次に、航空会社の台頭で、根こそぎといっていいほど長距離旅客を奪われた。ところが以外にも、鉄道業界の1957年以来の運用成績は、航空業界やトラック業界だけでなく、S&P50全体すら上回っている。・・・1980年、業界規制が大幅に緩和されたのをきっかけに再編の波が起こり、効率性が一気に改善した。減収は続いたものの、生産性が1980年以来3倍に向上したため健全な利益を確保できるようになった。とくにバーリントン・ノーザン・サンタ・フェは生き残った大手4社のなかでも運用成績が高く、1980年以来でみると年率17%の驚異的なリターンを達成している、。(69ページ)

進歩はバブルとともに、、

過去300年に起こった進歩は、多くの場合、バブルとともにあらわれ、おそらくバブルが後押ししてきた。運河もそうだったし、自動車も、ラジオも、飛行機も、コンピュータも、そしていうまでもなく、インターネットもそうだった。ビクトリア朝時代の鉄道ブームは、投資バブルを引き起しはしたが、鉄道網のおかげで、英国は経済的にも政治的にも発展した。こうした画期的な発明はすべて、人々の生活を根本から変えていった。発明が普及したのは、膨大な資本の後押しがあったからであり、資本を投じたのは、熱狂した投資家だった。(116ページ)

バーリントン・ノーザン・サンタ・フェは今、

 

本書が出版されたのは2005年。その後バーリントン・ノーザン・サンタ・フェは2009年11月米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイによって時価総額約370億ドル(4.4兆円)で買収された。

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米投資家バフェット氏が鉄道バーリントンを買収へ | Reuters

Freight transportation - BNSF Railway

資本主義はバブルと共に世界を変える

 

商業鉄道がイギリスで誕生したのが1825年、190年の間に幾多のバブルを生み出し、そして米国で投資会社に買収された。資本主義が膨大な投資を実現しそれによって世界を変えた。100年単位の時間軸で見たとき、鉄道はコモディティ化地域独占を形成する。そして鉄道事業は成熟産業として継続して利益を産んでいく。資本が世界をどう変えるか、一つのヒストリーがここにある。本書の副題は「永続する会社が本当の利益をもたらす」。鉄道事業の歴史は資本主義の歴史の、良い見本である。

蛇足

 

成長期の鉄道事業に投資をした人々が儲かったとは限らない。

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