毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

心は狩猟採取時代から替わっていない~『だまされ上手が生き残る 入門! 進化心理学』石川 幹人氏(2010)

だまされ上手が生き残る 入門! 進化心理学 (光文社新書)

石川氏は認知行動理論野研究家、 人間の特徴は「協力すること」です。他人のために働いても、他人は恩返ししてくれないかもしれません。それでも、協力する、という気持ちを、私たちの多くが共有しています。(2010)

進化心理学

ヒトの心理メカニズムの多くは進化生物学の意味で生物学的適応であると仮定しヒトの心理を研究するアプローチのこと(Wiki

狩猟採取の時代

 

進化の速度が一定であるとすれば、人間に固有な脳の99%以上は、狩猟採取の時代に形成されたと言えます。つまり、私たちの認知(ものの味方や考え方)や行動の形態は、狩猟採取の環境にふさわしいかたちに適応しているはずなのです。(117ページ)

狩猟採取のころは、食料が十分ではなく、ひとつの居住区に多くの人間が生活するのは困難でした。人々は、せいぜい100名前後の小集団で生活していたとみられます。・・・ほどなく人間集団は、役割分担にもとづく「協力」が生まれました。たとえば、マンモス狩りは一人ではとても難しい作業です。しかし、・・・分業体制にすれば、実現が容易になっていきます。(147ページ)

現代社会は記号の流通する社会

 

お金は、広い意味で記号の一種です。現代の社会では、お金だけでなく、さらに契約、法律、教義、ブランドなど、さまざまな記号が信頼を担なっています。・・・記号の信頼が、人間の行動をガイドし、協力関係を築く側面が、文明社会では大きくなっていきました。・・・(記号に信頼を置く状況に)貢献してきたのが、記号に概念作用を認めてしまうほどの、積極的な心の動きです。・・・つまり上手くいっている協力集団は、だまされ上手が多く集まっているのです。その方が、より結束力がつよく、(集団としても、メンバー個人としても)生き残りやすいのです。(188ページ)

文明以降の大集団

 

大集団での文明は形成されるようになってからは、共同体の達成目標を共有化するのに、想像力が大きな役割を果たしたと思われます。・・・宗教的な神話の世界は、私たちの日常世界の延長として語りつがれてきましたし、現代の政界や芸能界も(マスメディアによって)かなり世俗的に描かれてきました。個々の人間の想像力は、ふつう日常的に体験できる世界に留まっています。ですから、神の世界や政治の世界を人間関係の物語として提示すると、人々の想像が容易になって共同体の求心力が増すのです。(238ページ)

 

だまされ上手

我々は現在でも狩猟採取時代の100名程度の集団の思考様式に囚われているという。小集団のボスの言うことにだまされ易いことで一致団結して行動できてきた。更に我々はお金や法律、組織といった抽象概念を受け入れる=「だまされる」ことにより、小集団の先の大きな世界に拡張できるのである。例えば家族の間でお金のやりとりはしない。しかしお金を介在させることで他者から疑似家族サービスを受けることが可能となる。

我々の心理学的行動は狩猟採取時代から変化していない。

蛇足

だまされ易いから分業できる

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