毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

脂肪には味が無いのに欲しくなるのはなぜか?~『化学で「透明人間」になれますか? 人類の夢をかなえる最新研究15 』佐藤 健太郎氏(2014)

化学で「透明人間」になれますか? 人類の夢をかなえる最新研究15 (光文社新書)

 佐藤氏はサイエンスライター、化学とは、「昨日まで世界になかった物質を、自由に創り出せる唯一の分野」であり、 実際に現在、我々の生活を支える品々をあれこれ創り出している。(2014)

 

必要なものは美味しい

 

生命の必要な化合物を進んで摂取するようにするために、これら(の味覚を)を取り入れると快さを感じるよう、人体は進化したと考えられる。

どうして脂肪分を止められないか?

 

 

脂肪分が人間にとって、一番効率のいいエネルギー源ではある。なのになぜか、脂肪には味がない。・・・脂肪分の一部は体内で、「アナンダミド」という化合物に変わる。これは、マリファナと同じような作用を持っているらしい。・・・マリファナは、この化合物と同じ受容体に作用し、快感を与える。・・・塩分などは、一定以上に食べると不快になる。でも砂糖や脂肪には。こういう歯止めがないから、やめられなくなって肥満や糖尿病の原因にもなる。(193ページ)

 

うま味

 

 

肉のうま味はイノシン酸、ラーメンとか味噌汁の「だし」のうま味は、グルタミン酸という化合物のおかげ。イノシン酸グルタミン酸は、直接体に必要というより、「この食べ物にはタンパク質があるよ」というサインだね。タンパク質は体の重要な構成成分であるため、食べ物から大量に摂り入れる必要がある。グルタミン酸はタンパク質を作る部品のひとつであり。イノシン酸も細胞に含まれる成分。(195ページ)

 

グルタミン酸も20種類あるアミノ酸の一種なんだ。そのアミノ酸が何十とか何百とかつながったのが、タンパク質。・・・肉をある程度おいて熟成させると美味しくなったり、カレーは一晩経ってからの方が味がよくなったり、というのは、タンパク質が一部分解して各種アミノ酸ができてくるため。(199ページ)

 
エネルギー源と味覚

 

 

味覚は、甘味、塩辛味、苦味、酸味、うま味に分けられる。言われてみれば脂肪には味がない。甘味と脂肪は効率の良いエネルギー源。だから慢性的栄養不足が常態であった人間はエネルギー源を摂取する歯止めが存在していない。

うま味

 

アミノ酸とは狭義には(特に生化学の分野やその他より一般的な場合には)、生体のタンパク質の構成ユニットとなる「α-アミノ酸」を指す。動物が体内で合成できないアミノ酸を、その種にとっての必須アミノ酸と呼ぶ。(Wiki)

うま味とは結局タンパク質が分解したアミノ酸である。グルタミン酸は1908年に日本人によって発見された。当時欧米人は「うま味」が分らなかったという。欧米人にとって「だし」のグルタミン酸は馴染みがなかった。うま味には後天的側面があることになる。醤油ソースのステーキは肉由来のイノシン酸と醤油由来のグルタミン酸の二つを同時に摂取する。醤油味のステーキがグルタミン酸を美味しく感じさせる後天的経験になったことは想像に難くない。

我々は本来、避けるべき苦いコーヒーも飲む。うま味も感じる。脂肪は味覚が無いのに摂取したくなる。これらはいずれも後天的な学習効果であろう。味覚、脂肪によるエネルギー源の取りすぎが苦痛となる後天的学習をすればどうなるか?苦痛とエネルギー源の摂取が結びついたとき、それがダイエットと言えるのかもしれない。

蛇足

 

料理とは味覚を後天的にデザインすることである。

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