毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

胚盤胞という言葉を知っていますか?

 iPS細胞 不可能を可能にした細胞 (中公新書)

 黒木氏は癌細胞の研究家、2006年、山中伸弥は、たった4種類の遺伝子によって大人の細胞が、未分化の細胞に初期化することを発見した。(2015)f:id:kocho-3:20150720044056p:plain

 

胚盤胞

 

 

ヒトの場合、受精後5日ぐらいになると、細胞数が100個以上の「胚盤胞」となり、8-9日には子宮に着床する。胚盤胞は、文字通り、胎児となるべき胚と、胎盤になるべき細胞から構成される胎内の組織(胞)である。・・・外側の細胞は胎盤となり、胎児の栄養を与える。その内側の一方に偏って細胞の塊がある、たとえて言えば、、シュークリームのような細胞である。クリームの部分んは「内部細胞塊」という何の変哲もない名前で呼ばれる細胞の塊がある。この細胞こそが、われわれが追い求めている幹細胞なのだ。(5ページ)

 

ES細胞とiPS細胞

 

ES細胞胚盤胞の内部細胞塊の細胞を培養して得られる。iPS細胞は、成人の細胞を培養し、山中印紙と呼ばれる4種の遺伝子を細胞に導入して得られる。(6ページ)

iPS細胞は突然できたのではない。それまでの膨大な研究成果の結果可能になった金字塔なのだ。・・・iPS細胞に到達できたのは次に示すような3本のルートがあったからである。(20ページ)

核移植ルート

受精卵から生まれた場合、精子卵子に由来する2種類のゲノムが混じりあうのに対し、核移植による生殖は、核を提供した「親」とまったく同じ遺伝子情報をもつことになる。このような生物をクローンという。(22ページ)

ES細胞ルート

ES細胞の研究から、初期化した細胞がどのような顔をしているのか、どのような特徴をもっているのか、その培養条件などの情報が得られた。この分野の研究は、60年前の1950年代まで遡ることができる。(32ページ)

組織幹細胞ルート

分化した組織には、その組織特有の未分化な細胞が存在するであろうことは、昔から想像がついていた。そのような細胞がなければ、組織の一分に欠損が生じたとき、回復することができないからである。(38ページ)

生殖細胞を具体的にイメージする

 

ES細胞は人の生殖細胞を使うので医療倫理上問題があると言われる。胚盤胞は受精後5~9日の段階の受精卵である。ここから生殖細胞、内胚葉、中胚葉、外胚葉に分化していく。つまりは受精卵から体になる部分が1種類の細胞で構成されている段階なのである。分化した細胞から胚盤胞状態に戻したもの、これがiPS細胞である。受精後5-9日の細胞状態に戻していることになる。

どうしてiPS細胞が注目されるのか?「2006年、山中伸弥は、たった4種類の遺伝子によって大人の細胞が、未分化の細胞に初期化することを発見した」自分の体の一分を受精直後の状態に戻し、そこから同じ遺伝子をもった人間をもう一度最初から作り直すこともできることになる。受精後5-9日に戻って人生やり直せる、誰でも一度は空想するテーマであろう。

蛇足

 

胚盤胞から分化させたら同じ赤ちゃんが生まれるのであろうか?

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