毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

500年前ヨーロッパは小氷河期で今より気候が目まぐるしく変動していた~『歴史を変えた気候大変動』ブライアン・フェイガン(2001)

歴史を変えた気候大変動 (河出文庫)

 フェイガン氏は歴史と気候変動を研究、人類の歴史を揺り動かした五〇〇年前の気候大変動とは、いったい何だったのか?人口大移動や農業革命、産業革命と深く結びついた「小さな氷河期」を、民衆はどのように生き延びたのか?(2001、文庫は2009)

 

 
小氷河期

 

1300年ごろから1850年ごろまでの5世紀あまりに、気温が短期的にめまぐるしく変動した時代を指す。この用語は一般には「小氷河期」と訳されているようだが、この間ずっと低温が続いたわけではなく、むしろ氷河期のように氷期間氷期が繰り返された。(384ページ)

16世紀末の寒冷期

 

人口が増加し続ける町や都市では、食糧の供給がつねに問題となり、魚介類は生活に欠かせなかった干ダラやニシンはすでにヨーロッパの海産物貿易における主要な商品となっていたが、海水温の変化とともに、漁船団はさらに沖合で操業しなければならなかった。(20ページ)

 

タラは水温に極めて敏感な魚で水温が4度から7度が適当でそれを下回るとタラは移動してしまう。小氷河期水温の低下でオランダ・イングランドの沿岸でタラがあまりとれない時期になると、タラを求めて大西洋に乗り出したのである。

 

やがて1620年にはピルグリム・ファーザーズがメイフラワー号に乗ってニューイングランドに植民し、「神と魚に仕える」ようになった。(153ページ)

 

北ヨーロッパの農業革命

 

集約農業で商品作物がつくられるようになり、休閑地は飼料づくりに利用されるようになった。この動きは15世紀から16世紀にフランドルとオランダで始まり、スチュワート王朝の時代にイングランドにも広がった。この時代は気候が常に変動し、しばしば激しい寒さに見舞われた。イングランドの地主の多くはこうした新しい農法を受け入れた。大規模な囲い込み農地は土地の景観を変え、カブなどの新しい作物が食糧の乏しい冬のあいだも家畜や人間を支えるようになった。(21ページ)

 

目まぐるしく変わる天候

 

著者は気候変動の要因の一つとして北大西洋振動(NAO)を指摘する。南の高気圧(北西アフリカの太西洋)と北の低気圧(アイスランド)の位置と強さによってヨーロッパの気候が激しく変化する。我々は忘れがちであるが、気候の変動はゆっくりと穏やかに起きるのではなく突如として変化するものであった。。

ヨーロッパは資本集約的な活動に活路を見出す

 

不順な天候は飢饉、疫病の発生など過酷な生活をもたらした。1560年以降ヨーロッパでは魔女狩りが頻発するようになるがそれは天候不純の時期と一致するという。

それに対応して資本集約的な動きが生まれる。それが資本集約的な漁業、土地集約的な農業を興し、産業革命につながる事になる。気候は歴史を変えてきた。

現在の異常気象

 

我々は直ぐに異常気象という言葉を使う。小氷河期のヨーロッパの天候は今以上に変化が激しかった。たまたま直近の50年程度気候が比較的穏やかであっただけで、本来気候というものは常に変動を続けるものだという事を忘れているだけだと気づく。小氷河期が祝ったのは1850年ごろとされおり、ついこの間の出来事である。

蛇足

 

表紙はブリューゲル「雪中の狩人」は大寒波の1565年に制作

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