毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ヒーローとは自己犠牲を決意した人のこと~『神話の法則ーライターズ・ジャーニー』クリストファー・ボグラー氏(2002)

神話の法則―ライターズ・ジャーニー (夢を語る技術シリーズ 5)

 ボグラー氏はスターウォーウォーズの製作に関わるなど、ハリウッドで脚本担当の役員を務めた。心理学の巨匠カール・G・ユングと「ヒーローズ・ジャーニー」のジョーゼフ・キャンベルの深遠なるコンセプトを発展させた人生という旅のガイドブックでもある。(2002)

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ヒーローズ・ジャーニー

 

ヒーローは住み慣れた環境を飛び出して未知の世界に旅立つ。迷宮・森・洞窟・見知らぬ街や国。そこはヒーローにとって、新しい挑戦を受けたり葛藤を抱える舞台となる。しかし、同じ位多くのストーリーが、自己の精神や心、魂といった内面的な旅へとヒーローを導く。(42ページ)

ヒーロー

 

 ヒーローという言葉の語源は、ギリシャ語で「守り仕えること」である。ヒーローは羊の群れを守り主人に仕える牧羊犬のように、他の人びとの代りに自分の欲求を犠牲にする人物である。ヒーローという存在の根源は自己犠牲にある。(79ページ) 

神話の法則

 

著者は狩猟生活を営む部族をイメージして、神話の法則に従ってメンターがヒーローに語る冒頭部分を再現してみせる。一文でヒーローズ・ジャーニーの構造を示してくれる。

 

 

我が部族の兄弟たちよ、周りを見回してごらん。人々が、次第に減っていく去年の収穫物を何とか食いつないでいるのが見えるだろう、時代は悪く国中が死んだように見える。人々はひ弱に見え、一握りの人だけが気力に溢れている。ちょうど、お前のように。

 

 

お前は、もはやこの楽しみのない疲弊した場所に違和感を覚え、居心地が悪いと思っていることだろう。お前は知らないかもしれないが、もうすぐヒーローとして選ばれ、えり抜かれた未知を求めし者たちとの仲間に加わることになる。彼らはいつも未知なるものに直面する旅に出かけていく。

 

 

お前は、我が部族すべてに命と健康を蘇らせるために旅に出るだろう。その冒険でただ一つ確かなことは、お前がその旅によって変わるという事だ。お前は不安に思うことだろう。しかしそこには、胸が躍るようなことがお前を待っている。お前がこの世界から自由に解き放たれ、冒険の世界に足を踏み入れる準備はできているのだ。(166ページ)

 

決意した者

一人のヒーローが選ばれる。彼は周りの者より少しだけ気力に溢れている。ただそれだけである。未経験であり、準備ができている訳でもない。彼はリスクを侵してヒーローズ・ジャーニーに出かける事を決意する。ヒーローに資格があるとすればただ一つ、ヒーローズ・ジャーニーに出かけると決意したことだけだと解る。

人類が創作してきたストーリーはこのヒーローズ・ジャーニーのスタイルを繰り返してきたという。聖書に始まり多くの小説・映画がこの構造を踏襲するl。身近な所で言えば、もののけ姫など宮崎駿作品の多くがヒーローズ・ジャーニーの構成を取っている事も良く知られている。

そもそも人類の歴史が、無名な人々のヒーローズ・ジャーニーの積み重ねで出来ていると気づく。

蛇足

メンター(賢人)もギリシャ神話の登場人物Metohsに由来。

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