毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

出版とは典型的な資本主義活動であった~『知識の社会史ー知と情報はいかにして商品化したか』P・バーグ(2004)

知識の社会史―知と情報はいかにして商品化したか

バーグ氏は文化史の研究家、知はいかにして社会的制度となり、資本主義世界に取り入れられたか。(2004年)

 

印刷出版、そして資本が知識の商品化を加速

 

本の出版それ自体商売であり、実業家たちの関心を惹きつけた。実業家たちはすでに15世紀には、印刷業者の資金調達を手助けしていた。さらに重要なこと、少なくとも目下の研究の観点から見てさらに重要なことは、印刷があらゆる種類の知識の商業化を助長したことである。印刷術の発明がもたらした明白な、しかし意義深い帰結の一つは、知識を広める過程に、つまり「啓蒙の商売」に、企業家がより密接に関わることになったことである。(241ページ)

 

商品化したから著作権が必要となる

 

潜在的な利益が高くなるにつれて、包括的な法律によって文学的なあるいは知的な財産を保護することがますます緊急の課題になってきた。たとえばイギリスでは著作権法が1709年に成立した。この法律の成立は、知識を共有のものとする考え方という、対立する二つの考え方から生じる問題を解決しようとする試みであった、と解釈することもできよう、。(244ページ)

16世紀のヴェネチア

 

 

ヴェネチアの印刷業者の数の多さが、読書人にとってこの街の魅力の一つだった。市場によって彼らは、パトロンから独立して生計を立てることができたからである。(245ページ)

 

17世紀のアムステルダム

 

 

17世紀になると、オランダ共和国がヴェネチアにとって代わって、他国よりも宗教的多様性を許す寛容さをもつ安全地帯の島となり、そしてまた情報の主要な中心地にして主要な市場・・・「総合倉庫」となっていた。(246ページ)

 

18世紀のロンドン

 

 

1777年までには、ロンドンには72の書籍商が存在し、その当時のほかのヨーロッパのどの都市より多くいると言われた。「業界」(The Trade)という言い方は、まるで書籍商こそが商売人(trader)の典型であるかのように、書籍商のことを言うのに使われた。(249ページ)

 

知識の商品化

 

 

知識の取引は18世紀に始まった新しいことではない。新しいのは、知識は大きな商売になってきたことである。「百科全書」の出版社の一人であるシャルル・ジョセフ・パンクークが、百科全書を商売の仕事と表現したが、その表現が事情を要約している。17もの雑誌の所有者であったパンクークは、知識を売る手順について誰よりも知り抜いていたのである。(262ページ)

 

知識の商業化

 

出版が資本主義的活動そのものであると気付く。出版の中心地はヴェネチア、アムステルダム、ロンドン、(そして多分今はニューヨーク)、と資本主義の中心を移動していく。資本主義は知識を流通させるスピードを一挙に加速したのである。

考えてみれば産業革命(18世紀中~19世紀)より前は今より製造業の比率は相対的に小さかったはずである。逆に言えば産業に占める情報産業の比重が高かった。情報産業は今始まったのではなく、先進国では大量消費時代の終焉によって、その前に戻りつつあるだけである事に気づく。

蛇足

 

知と情報の商品化は昔から行われてきた。

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