毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

♪やぎさんのゆうびん♪に学ぶ、贈与と返礼が世界の基本~『寝ながら学べる構造主義』内田 樹 氏(2002)

 

寝ながら学べる構造主義 (文春新書)

内田氏はフランス現代思想の研究者、構造主義とは「私たちはつねにある時代、ある地域、ある社会集団に属しており、その条件が私たちのものの見方、感じ方、考え方を基本的なところで決定している。(2002)

 

世界で親族システムを持たない社会は存在しない。親族システムがある事の本質は贈与と返礼であるという。世界は贈与と返礼で動いていることになる。

 

親族というシステムが存在する理由

 

 

親族システムにおいて、ある世代において女を譲渡した男と女を受けとった男のあいだに生じた最初の不均衡は、続く世代において果たされる反対給付によってしか均衡を回復されない(160ページ、レヴィ=ストロース 構造人類学からの引用)

 

反対給付

 

 

何か「贈り物」を受取った者は、心理的な負債感を持ち、「お返し」をしないと気が済まない、という人間に固有の「気分」に動機づけられた行為を指しています。・・・贈与された者は返礼することによっていったんは不均衡を解消しますが、返礼を受けた者は再びそれを負い目に感じ、その負債感は、返礼に対してさらに返礼するまで癒されません。ですから、最初の贈与が行われたあとは、贈与と返礼の往復が論理的には無限に続くことになります。(161ページ)

 

贈与と返礼のサイクルは何を生じさせるか?

 

 

効果の第一は、贈与と返礼の往復のせいで、社会は同一状態に留まることができない、ということです。・・・それは社会関係は振り子が震えるように、絶えず往還しており、人間の創り出すすべての社会システムはそれが「同一状態に留まらないように構造化されている」ということです。(162ページ)

 

贈与と返礼の内面的効果

 

「人間は自分が欲しいものは他人から与えられるという仕方でしか手にいれることができない」という真理を人間に繰り返し刷り込むことです。何かを手に入れたいと思ったら、他人から贈られる他ない。そしてこの贈与と返礼の運動を起動させようとしたら、まず自分がそれと同じものを他人に与えることから始めなければならない。(163ページ)

やぎさんゆうびん

 

贈与と返礼の構造は黒ヤギさんと白ヤギさんの歌を思い出させる。

白やぎさんからお手紙着いた/黒やぎさんたら読まずに食べた

仕方がないのでお手紙書いた/さっきの手紙のご用事なあに

黒やぎさんからお手紙着いた/白やぎさんたら読まずに食べた

仕方がないのでお手紙書いた/さっきの手紙のご用事なあに

レヴィ=ストロースの構造人類学の知見は、人間が他者と共生していくあらゆる集団は、黒やぎさんは自分にお手紙を書いても意味がないのであり、必ず白やぎさんの介在を必要とする。そして贈与を受けた者が自分でそのサイクルを止めてしまう事が心理的に出来ない。我々の社会はシンプルである。

蛇足

 

やぎさんの手紙が送っている「もの」の本質はなにか?

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